2020-06-20

デカパイダーマ

六月十九日金曜日半月 オウルシャッハ記

今日一人のデカパイダーマンが死んだ。

36階の高層ビルからの落下死だ。

高層階にあったのはデカパイダーマンの自室。

デカパイダーマンは自室で何者かと揉み合いへし合い、まさぐりあったまま地面に落下したと言うのが検死結果だった。

彼女をずりネタにしていた我々ヒーローたちは彼女の死を悼んだ。

葬式の場でマスクの下のデカパイダーマンの素顔が晒された。

50絡みのブロンドの女だった。

近親者には子供もおり、仕事交流しかなかった我々は彼女の家庭的な面に驚いた。

デカパイダーマンはニューヨーク治安を守るヒーローだった。

そのデカパイから繰り出されるビンタ体当たり色仕掛けニューヨーク市民の股間を鷲掴みにし、ペプシホットドックプレス広告塔も務めて一斉を風靡した。

ファンへのサービスも厚く握手会デカパイ上映会、ファン感謝祭バスツアーなどサービス豊富で、言わば80年代を彩るデカパイだったのだ。

葬式に参列したオウルマンオウルシャッハ、フクロート製薬などのヒーローたちと思い出を語り合ったが、全員がデカパイダーマンは自分好意があったと言って聞かない。

デカパイから母乳を噴射する「デカパイダービーム・スラッシュ」を何度も浴びてきたミルク臭いであるところの我々にも、彼女について去来する様々な思いがあるようだった。

一点気になるのは、高層階からまさぐり合いながら落下した相手が落下後に事件現場から立ち去ったと言うことだ。並の人間にできることではない。

我々元ヒーロー現在隠居中だ。今後の警察捜査の進展を祈る。さらデカパイダーマン。安らかに眠れ。

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