2010-05-02

自分赤ちゃんHIV陽性の看護士に任せたいかどうか

HIV陽性が判明した看護士に、病院実質的解雇の要求をした話について。

 

http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1469548.html

http://anond.hatelabo.jp/20100502170423

 

2ちゃんねるの反応が頭悪そうなのや、あまりに正直すぎるのも驚いたが、

それ以上に、はてブブログtwitterなどの非匿名メディアでの反応が

みんな恐ろしくいい子ちゃん過ぎて驚いた。

 

積極的に差別をする気はないけど、HIV陽性の看護士なんて感覚的には嫌だろう。

みんな、そんなに建前トークで、いいカッコしたいのか?

それとも、担当看護士を自由に選ぶ立場になった時の自分の心の動きが

想像出来ないほど、想像力に欠けているのか?

 

自分HIVに関する知識や関心は高い方だと思う。

感染力の低さも、感染経路も全て知っているし、自分でも定期的にHIV検査を受けている。

だが、それでもHIV看護士がいる病院はなんとなく嫌だと思う。

こんなことは誰にも言わない。はてブでもブログでも書かない。

友人から「このニュース、どう思う?」って聞かれたら、

病院の都合もわからないでもないけど、この対応はどうかと思うよ」って言う。

でも本当は、この対応は当たり前だと思っている自分がいる。

 

 

想像してみてほしい。

自分じゃなく、自分赤ちゃんが、血液検査を受けることになった時。

担当看護士をどっちかを選んでいい、という話になった時。

HIVキャリアであることを明示している看護士と、

HIVキャリアではないと明示している看護士

どちらを選ぶ?

 

俺だったら、HIVキャリアじゃない方を選ぶ。

どんなに差別主義者と言われたって、子供のためにそっちを選ぶ。

 

これが、自分採血だったら、そこまで気にしない。

なぜか?

自分採血の時に天秤にかけられているものは、

差別主義者ではない自分、というプライド」 と 「限りなく確率が低い感染リスク」 だからだ。

社会正義燃えて、プライドを持って生きている人なら、ささいなリスクより、自分プライドを大事にして、

あえてHIVキャリア看護士の方を積極的に選択する人も多いだろう。

それでも、一瞬考えて悩むはずだ。

どちらを選んだかが公表されないのであれば、安全な方を選ぶ人も多いのではないか。

ともあれ、自分のことなら、この程度の悩みで済む。

自分で全責任が取れるからだ。

 

 

これが、自分子供採血を受けさせる場合だったら、どうだろうか。

差別主義者ではない自分、というプライド」 と 「限りなく確率が低い子供への感染リスク」になる。

ここでも、自分プライドを優先できるだろうか?

それは、むしろエゴなのではないか?

もしくは逆に、子供への教育の一環として、「『差別主義者ではない親』というプライド」を優先させるか?

さらに、HIV陽性の看護士を積極的に選んだ理由を、配偶者に責められた時、しっかり反論出来るだろうか。

これが原因で離婚になってもおかしくないくらいの問題だ。

そのようなリスクを踏まえてもHIVキャリア看護士を選べる人は、稀なのではないか。

 

 

もしこれが看護士じゃなくてHIVキャリアの友達と今までどおりの交流をするか、という話だったら、

多少は気になるけど友達のことが好きだから、気にしない。

その時でも、「友情」×「プライド」 > 「嫌な感覚」×「わずかなリスク」 という不等号が成立しているはずだ。

友人がHIV陽性になったと聞いて、表面的には冷静にしていても、何にも意識せずに接することが出来る人はいない。

そこまでHIVは当たり前の病気には、まだなっていないからだ。

その友人とグラスの回し飲みをする時、その事実を完全に忘れていなければ、一瞬でも頭の中をよぎるはずだ。

それでも気にしない振りをして同じグラスで飲む俺カッケー

とまでは行かないが、「大事な友人だからな」という一種特別な気持ちはあるだろう。

 

だが、その友人が、自分子供にも平気でグラスを回していたら、どう思うか。

正直なところ「なんて無神経なやつだ」と思うのが大半だろう。

さらに、その相手が旧来の友人ではなく、今日たまたま食事の席で隣になって

会話を交わしただけの人で、実は私HIVキャリアなんですよ、という告白を受けた後だったら。

子供にグラスを渡される前に、声をあげて注意するのではないか?

それすらも差別と言うのか?

 

 

病院側の対応は、おおむね間違っていない。

看護士として働かせ続けるのはもちろん、事務職などに移したとしても、

どこからともなく漏れ風評被害経営難に陥っていた可能性がある。

むしろ、看護士感染が確定して、表沙汰になった時点で「詰み」なのだ。

続けて雇うも地獄解雇地獄。どちらも風評被害はまぬがれない。

 

他人事を、冷めた視点であれこれ批評するのは簡単だ。

いくらでも自分のことは棚に上げられるし、正義感ぶることも出来る。

偽善者って、こういうことを言うんじゃないかな。

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