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死者は500人以上に達した模様・・・しかし新華社筋は156名死亡と情報操作
「7.5ウルムチ事変」と後世の史家は名付けるかも知れない。
暴動に発展したウィグル人の怒りは文革以後最悪の被害をもたらした。
世界ウィグル人会議(議長=カディール女史)が呼びかけた平和裡の抗議集会は、混入した過激派や公安のスパイなどの策動によって暴動となった。日頃の漢族に対する鬱積、不満、憎悪が一気に爆発し、多くの一般ウィグル人も加わったためだ。
新彊ウィグル自治区の省都=ウルムチは人口230万人、漢族が七割をしめ、経済の90%を支配する。
新彊ウィグル自治区そのものは原油、ガス、レアメタルの宝庫。砂漠は核実験場として無造作な実験を繰り返し砂漠の民、およそ十九万人が被爆して死亡している。
ガス、原油は漢族によって「盗掘」され、これもウィグル人から見れば、自分たちの財産が不当に収奪され、利益は漢族が独占している構造となる。侵略者としての漢族、宗教弾圧者としての漢族、支配者としての漢族。
したがって父祖の地を自分たちの手にもどそうとする独立運動が起きるのは当然であり、「東トルキスタン」としての独立を求める主流派と「ウィグルスタン」としての独立を求める派、さらにはアルカィーダに走る若者のグループがある。
中国はこれらを「分離主義」として、あたかも犯罪者のごとく扱ってきた。
7月5日夕方から発生したウルムチ暴動は、官製情報によっても、死者156名、負傷800名、パトカー二台、タクシー10台、公共バス190台などが焼かれ、106軒の商店や民家が放火、損壊被害にあった、という(日本マスコミ大手は新華社発表の140名死亡という数字を使っているが、BBC、フィナンシャルタイムズ、NYタイムズなどは156名としている)。
中国政府は外国人特派員のウルムチ入りを禁止せず、いやむしろプレスセンターを設置して情報の一元管理、官製情報だけをあたえ、インターネットは切断されている。
中国は「ウィグル独立過激派による暴力」というイメージを外国プレスに宣伝しているが、ワシントンのカディール女史は暴力を根底から否定、ミュンヘンに本部のある「世界ウィグル人会議」も、暴動の原因を否定し、あくまで平和な行進を呼びかけたに過ぎない、としている。
暴動は伊寧、ホータン、カシュガル、アクスなどにも飛び火した模様だが、軍四万が動員されたという以外の情報はいまのところない(7日午前五時現在)。
ウルムチでは王楽泉・党書記が「企業の三日間の休業」を命じ、ただちに戒厳令を敷いた。以後、情報が管理されるため、正確な数字の把握は不可能。血の弾圧が開始される。
共産党員の腐敗と荒淫に抵抗したヒロイン登場!映画にでもできそうだ。
いささか旧聞だが、その事件は5月10日夜におきた。
中国湖北省巴東県政府の幹部3人が、地元の「雄風賓館」でカラオケを楽しみ、飲んだ勢いか女性従業員の玉嬌に「性的サービスをするよう」要求した。
ところが拒否されたため三人は集団で強姦し、玉嬌が強く抵抗、所持していたナイフで、主犯格を殺害し、もう一人の幹部に怪我を負わせた。
殺害後、自ら警察に通報し自首。警察は彼女を逮捕して精神病院に収監した。ここまではよくある話、中国では日常茶飯、たいがいは泣き寝入りである。
ネット時代、共産党末端の横暴は民衆から意外な手段での報復を受ける。
地元警察は精神病院に収監されていた玉嬌に暴行を加え、虐待したほか、玉嬌の母親を脅して、「死者(貴大)の精液が付着した彼女の下着を処分せよ」と命じた。さらに、無料弁護を申し出た弁護士の解任を強要した。
するとあっという間に中国いたるところに伝わった。共産党の情報操作の網の目をくぐることがあるのだ。
およそ二億人の署名が二週間で集まり、殺人犯の玉嬌を支援した。彼女は一躍、ネット上のヒロインになった。彼女をモデルの「巴東烈女伝」がネット網に流れると熱狂的に読まれ、若い男性を中心としたファン・クラブも登場した。
それらの多くは玉嬌を早く釈放するよう当局に要請した。
北京言語大学日学文研究所の高旭東所長が代理弁護を要求したおりの手紙も公開された。
高は次のように言った。
「孟子曰く「富貴も淫する能わず、貧賎も移す能わず、威武も屈するあたわず、これ大丈夫という(富貴でも不正をせず、貧しくても卑屈になることなく、威勢な武力に屈することはない。これは立派な行いである。玉嬌さんの行為は中華民族の精神である。事件を歪曲報道する新華社は真実を語れ)」。
結果、当局は玉嬌さんを殺人罪で起訴しようと準備したが、世論の高まりの前に、書類送検だけにとどめた。
これまでの暴動やデモは農地を収奪された農民が政府ビルに詰めかけ、投石し、建物を破壊し、パトカーを燃やすなど群衆行動が多かったが、近年は共産党幹部の不正や腐敗を批判する行動が目立つようになりつつある。
インターネット普及以後の新現象である。
そういえば、08年に上海の公安警察六人が、たった一人の若者に刺殺された事件でも、ネット世論は圧倒的に刺殺犯を支援し、「烈士」「義賊」と賞賛の嵐だった。
ネットは西側の政治を大きく変えて、オバマの誕生を生んだが、中国でも次の段階へ至る。当局はあらゆるパソコンのモニター化を制度化しつつあるが、新技術の進展のスピードには追いつけないだろう。