ただその扉にも条件があって、それは"しっかり閉まっている"こと。
閉じられている扉を開けるのが好きなのだ。幼少期には家の扉をよく開け閉めしていたらしい。
学生の頃、お気に入りは屋上への扉だった。当然普段は鍵が掛かっており入ることはできない。でも私は別段屋上へ行きたかったわけではない。ただ、屋上への扉を開けてみたかったのだ。
閉められた扉の向こうには何があるのか。もちろんそこには地続きの空間が広がっているのだと頭の中では理解している。でも、もしかしたら扉の向こうには私の知らない世界が広がっているかもしれない。そうした思いを幼少の頃から抱き、捨てきれずに育ったのだと思う。
扉の向こうには希望に満ちた暖かい夏があるのかもしれないのだと、私は未だに閉まっている扉を見つけ想像する度ドキドキする。
扉の向こうに潜む夏を望むほどには、私は夏が好きなのだ。