我が家にはひなたぼっこモデルがいた
そのモデルは器用で扉を自分の手で開けられる
癖に人が近くにいると姿勢よく座り、こちらに
「あけろ」と目で訴えるような奴だった
ステージは縁側の一番端、落ちそうなぐらい
モデルはそこに爪で何回か記しを付けると
横になることもある
姿勢よく座っていることもある
色んなポーズをとった
やがて目をつぶると、モデルはさっきまでのわがままさはどこへやらまるで仏さまみたいな顔つきになるのだった
私は撮影者となり、何枚も撮った
痩せたり、太ったりしたが、何枚もだ
時には睨まれることもあった
だが、モデルは睨む顔も素敵だった
やがてモデルは引退して、その後は雲の向こうで
のんびりと永遠に生活することになった
空席となった縁側には他の家からモデルになりたい子が来たりもした
梅の花が追悼のつもりなのかはなびらを落とす
柚の実が香水をそっと撒く
そんな事もあった
だけど縁側の空席には今日も日差しが我が家の
モデルを待っている
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