2023-11-09

独り暮らしをしている

そして猫を飼っている。

名前ピーターウィルソン

雑種の猫で、目が微かに黄色い。

一度病院で見てもらったけれど異常はないらしい。

23上京し、その後すぐに拾い今に至るので5年の付き合いになる。

僕はといえば毎朝忙しなく起床し、忙しなく支度をして忙しなく家を出る。

忙しなく仕事をして、終えると忙しなく家に帰る。

僕は常に、何かに焦っていた。

昇格した同僚に対してかもしれないし、結婚した同級生に対してかもしれない。

日々生まれる新たなサービスに対してかもしれないし、巷で騒がれる話題作に対してかもしれない。

僕は焦っていた。

置いていかれるのはごめんだ。

日々を忙しなく過ごして、忙しなくするのが普通だと思っていた。

そんな僕の姿をピーターは寝ぼけ眼の目で見つめ、退屈そうに「にぁあん」と鳴くのだ。

そしてのそのそと起き上がると僕の膝の上に登り、ベーグルみたいに丸まるとゴロゴロと喉を鳴らしながら目を閉じる。

身動きがとれなくなった僕は動けず、置いてけぼりをくらう。

でも、それでもいいかとそのとき僕は思えるのだ。

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