■俺は猫が恐い。
うちの会社には猫がいる。
社長の飼い猫だ。
猫は会社内にいて、いつも自由にうろついている。
ほかの社員はみんな、その猫を可愛がっていて社のマスコット的存在だという。
だが俺は猫が恐い。
昔から苦手だった。
でも直接的に猫が苦手なわけでも、恐いわけでもない。
俺は思う。猫を見くびっているんだと。
俺は思う。猫を可愛いといって頭を無邪気になでられるのは、自分のことを猫より上だと思っているからだと。
幼少期、俺はよく親父に暴力を振るわれた。その後親父は俺に謝り、俺の頭をなでる。
頭をなでられ何もしないのは、従順である証拠だ。
みんな猫の頭をなでる。力関係を示すように。
みんな猫の頭をなでる。自分が上であることを証明するように。
俺は猫が恐い。
それ以上に、俺は人間が恐いのかもしれない。
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