いや、思っていた。
実はそうではなく、心を刺す出来事があった時は子供の頃と同じだけ傷ついているが、それを有耶無耶にする言い訳を得ただけだったようだ。
子供の頃ならしくしく泣いていただろうが、今は当然泣くことはなく、まず「自分に責があったのだろうか」と考えて、少し落ち着いたら「なるべくしてなったのだ。」「この出来事にもメリットはある」と自分に言い聞かせた。
そして、悲しく辛いという気持ちを心の端にぎゅうぎゅうに押しやった。
こんなことを何年も何度も続けている内に、泣くことも無くなり、誰かに怒りをぶつける機会も失せ、段々と空虚な気持ちになってきた。
悲しい時に泣けず、怒った時に言動に出せず、ひたすら我慢するくせがついてしまった。
そうなると、もう誰かと関わるのすら面倒になってくる。これはきっと自信が理想としていた大人像とはかけ離れている。
今もとても悲しくて辛くて、心が捻じ切れそうなのに、どこかストッパーがかかって泣けやしない。