それでよく見ると猫が犬になってた
驚いて今度タマって呼ぶと「ニャー」と鳴く猫に
これって呼んだ名前に変わるのかと思って試しに嫌いな上司の名前呼んだら目の前にその上司が現れてさ、慌ててイチロウ!って叫んだ
目の前には一昨年に亡くなった愛犬がいた
生前の、元気なときみたいに尻尾をぶんぶん振ってさ、名前を呼ぶとすぐ寄ってきた
頭を撫でていると懐かしくて温かくて、そういえばよく嫁さんとも一緒にイチロウの散歩に行ったな、なんて思い出して
無意識に嫁さんの名前を呼んでてさ、「元気?」なんて言われて顔を上げると目の前に嫁さんがいた
「元気だよ」って答えて「そう、よかった」だって
おかしいよね、だって本当は色々、もっとたくさん、言いたいことも話したいこともたくさんあったはずなのに
言葉に出るのはこんな些細な言葉ばっかで、何やってんだよ俺って思いながらも、どうしようもなかった
「なんとか元気でやってるよ」ってことばっかり、アホみたいに繰り返してさ、そんなアホみたいな俺の言葉を聞くたび嫁さんはニコニコしてた
本当、変な夢だった
でも夢の最後に泣いてた俺は起きたときにも泣いてて、夢の中の続きを味わってるみたいな現実でなんだか変な気分で、たぶんそのせいだ
しばらく涙が止まらなかった。