窓を見てボーっとしているのが好きだったようだ。
いじめは無く、優しい仲間で溢れているはずだった。
そんな中、ゆうくんだけは何かが違った。
ゆうくんは小学校4年生にして身長160cm以上あったと思う。異常にひょろ長かった。
目は細く、優しそうな印象を受けるが光が入っているように見えない。
よだれを垂らすとかそういうことは無いが、行動が時々わけが分からなかった。
「たろうくん」という人が居た。ガキ大将だ。
そんなガキ大将も、ゆうくんには親切にしてあげていた。
たろうくんが、ゆうくんに対し親切にすると、ゆうくんは
「たろうくん!たろうくん!たろうくんたろうくん!
……たろうくん何歳??」と繰り返す。他にも脈絡の無い質問を繰り返した。
話しながら、タンゴのカスタネットのように両手を頭上でパシパシ叩くのが癖だった。
そんなある日。
「たろうくん何歳……?パシパシパシパシ
たろうくん何時……?パシパシパシパシ」パシッ
たろうくんは、ゆうくんの腕を取り、タンゴのカスタネットを防いだ。
「ぐあぁああああうぁうううぅううううぁぁぁ!」と表現しきれない奇声をあげたあとに、
たろうくんの腕を振りはらい、たろうくんのことを3回くらい平手で殴った。
この、タンゴのカスタネット風の行動は、ゆうくんにとっては大切なものだったのかもしれない。
その後あたりから、ゆうくんは怒らせると怖いという認識が広がり、話しかけに行く人が減った。
ゆうくんは相変わらず窓の外を見ていた。
その後数ヶ月して、何故かゆうくんは転校していった。
懐かしい。昔のままだった。自転車に乗って楽しそうにどこかに走っていった。
どうしようもなく羨ましかった。