母親に母の日のプレゼントを買いに行った電鉄系の老舗デパート。閑散とした店内。すんなり来るエレベータ。
下の階から乗ってきたかたせ梨乃さんと二人きりになる。思い切って話しかけようとした矢先。彼女の方から声をかけてもらった。
「そのプレゼント、誰に?」
「親孝行だね。でも、ちょっと待って。包装紙の端が破けちゃってるよ。」
「ええ!?あ、その、ありがとうございます。」
「屋上いこ。」
「あ、はい。」
屋上のベンチに一緒に座る。丁寧にプレゼントを包み直してくれる彼女。白い首筋からとても良い香がした。京都にいた頃、憧れていた女性が焚いていたお香に似ていた。
こみ上げるものを我慢できずに、唇を近づける僕。自分でも信じられない行動。あのかたせ梨乃さんにこんなこと。
「ああっ」