変声期頃にはよくある話なのかは知らないが、まさに「声にならない」という表現がピッタリな出来事だった。
息は通る、口も開く、だけど声はならない。嗄れたり、掠れたりというわけでもなく、発声できないのだ。
当然コミュニケーションに齟齬を来したのは言うまでもないことで、友人からは当時ACのCMで流れていた「協力してください」という手話でからかわれたり、毎時間担当教師に紙で「声が出ないので板書以外は指名しないでください」と提出しなければならなかったりと、面倒だった。「そんなことは今までなかった」という教師も多く、まったく信じてもらえない人もいた。いたけれど、どうしようもなかった。手段を持ち合わせていなかった。顔真っ赤にして泣けばよかったのか?
家族からも病院を薦められたのだが、どうせ明日にでも治るだろうと大して会話せずに一日を終え、翌日になるとしっかり声が出た。不思議である。