ある時、タンスを開くと私のパンツをかぶって寝ていた。違う日には洗濯機と壁の隙間に入り込んで丸くなっていた。冷蔵庫の中で震えていたり、歯磨き粉を出したら一緒に出てきたこともあった。しかし、私がおっさんの姿を見つけると慌ててどこかへ消えてしまうので話したことはない。
ある日、部屋のエアコンの上に、見知らぬ段ボール箱があるのに気付いた。脚立を持ってきて調べてみると、小さな入り口が開いていて、中で体育座りしているおっさんと目が合った。私が覗いてもおっさんはどこ吹く風で、その様子はまるで終の住処を見つけたと言わんばかりだった。
それ以来、おっさんは段ボール箱に住み着くようになり、私の姿を見てもどこかへ消えることは無くなった。
時々どこかへ出かけているのか、姿が見えないことがあったが、帰ってくると決まっておっさんの家の中にちゃぶ台や座布団や畳が増えていた。いつの間にか小さなテレビや冷蔵庫まであるようになり、少し経つと普通の家と変わらないような内装になっていた。しかし、寝る時は相変わらず私のパンツをかぶって寝ていた。きっと気に入ったのだろう。
おっさんは今、家の中で小さなテレビを見ている。ちゃぶ台には缶ビールと枝豆が置いてあった。最近は毎日テレビを見て酒を飲む生活をしているようだ。暇じゃないかと思うが、これがおっさんにとっての幸せな生活なのだろう。
http://anond.hatelabo.jp/20160529184351 評 ひさしぶりのポエジー。 書き手の「私」(女と思われる)の部屋に、 ある日小さなおっさんが現れ、 不思議な同居生活が始まるというお話。 おっさん...