2007-03-04

夢なんか叶わないほうがいい

小学生のときは「ゆうふくなサラリーマン」、中学生になったら「裕福なサラリーマン」、卒業文集の“将来の夢”の欄には、そう書き続けた。どんな内容の仕事でもいい、土日祝日休みで、給料をたくさんもらえるサラリーマンになるんだと、ずっと夢見ていた。

父親は、とある会社社長をしていた。「社長」なんていうと響きは良いけれど、ごく小さな、そして運営が苦しい会社社長なんてものは給料が無いに等しいらしい。会社の運営と従業員給料で一杯一杯だったようで、うちの生活費は全て母親パートに出て捻出していた。そんなわけで、家は貧乏だった。「貧乏暇なし」の言葉どおり、父親はいつも忙しく外を飛び回り、母親パートで家を空けていることが多かった。

友達なんてとても呼べないくらい、狭くてボロボロの借家に住み、衣服は親せきからの貰い物ですませていた。その貧乏ネタいじめられた事もあったけれど、徹底的に仕返しをしたら、いじめられなくなった。代わりに無視が始まり友達は去っていって、ひとりぼっちになった。「これは全て家が貧乏なのがいけないんだ」と、うまくいかないことを全て貧乏のせいにして、貧乏を激しく憎んだ。また、零細企業社長なんぞやっている父親を心から憎み、軽蔑し、大きくなったら絶対に社長になんかなるもんか、サラリーマンになってやると、心に誓っていた。

バイト奨学金高校に通い、新聞配達をしながら(新聞奨学生大学に通った。「一流の大企業サラリーマンなら、きっと裕福なサラリーマンになれるに違いない」と信じ、就職活動では全てそういった企業を志望した。そんな信念のおかげか複数の企業から内定をもらい、そのうちの一社に入社した。多くの人が知っているであろう有名企業で、土日祝日休み。朝から晩まで働きづめになることもない。月収はそれほど多いわけではないけど、ボーナスたまに出る各種報奨のおかげで、年収ベースで換算すると同世代ではかなり高額なほうだろう。入社して5年、「裕福なサラリーマンになるんだ」といういつかの夢が、気がついたらすっかり叶っていた。

夢が叶ったのだから幸せなはずなのに、最近死ぬことばかり考えている。なぜかって、この先どうしたらいいか分からないから。多くの人は「交際→結婚家族形成」と進んでいくようだけど、異性への興味もそれほどないし、子供も嫌いだし、家族なんて持ちたくもない。仕事に生きればいいのかもしれないけど、今の仕事が好きになれるとは到底思えない。趣味といえるようなものは、このはてなくらいなもので、無駄に預金ばかり貯まっていく。夢が叶ってしまい、自分自身はすっかり空っぽになってしまった。こんなことなら、夢なんて叶わなきゃよかった。一生「裕福なサラリーマン」になることを、追い求めていられればよかった。

「夢は叶いました。めでたしめでたし」で、幕が閉じてしまえばいいのに。

夢なんか叶わないほうがいい。

  • 退職してもう1度同じ夢を追い求めるとか...あとはまた違う夢を探すとか...夢を見つけることを夢にするとか

  • まあ、夢は叶えるものじゃなくて見るだけのものですからね。 理想を目標にしたり、目標を理想にしたりするなんて馬鹿な真似をしていると結局立ち往生してしまいますよ、という話の...

  • いいなー、なんでもできんじゃん。 土日にコンサートやミュージアム見に行ったり美味い飯喰ったり作ったりパーティー開いたり、スポーツ大会したり、アニメ見まくって森永卓郎みた...

  • 新しい夢を探すことが夢になりました、でいいんじゃない? 暇な時間に本を読んだり、ボランティア活動したり、投資したり、なんでもやってみたら?

  • 今まで「裕福なサラリーマン」を夢にして頑張って来れたことが不思議。 俺にはそれは出来ないし、凄く尊敬する。 「裕福」とか「金」とか「富」とかって、目的じゃなくて手段とか結...

  • 鉄道の時代は後に自動車の時代となり、飛行機の時代となりました。 そうは言っても結局は歩くんです。足腰(字面だけの意味じゃないよ)が確かなら 天に昇る以外のどこへでも行ける...

  • http://anond.hatelabo.jp/20070304110531 飛び回る父、働きにでていない母、いじめてきて仕返しするといなくなった友達。 「これは全て家が貧乏なのがいけないんだ」と、いう「これは全て」は...

  • あなたが望むなら、あなたのお金を使って増田やはてなのみんなで楽しいことを追求してるうちにあなたを幸せな第二の夢に向かわせてあげるのに

  • http://anond.hatelabo.jp/20070304110531 裕福といっても世界一じゃないだろ?もっと金持ち目指してみたら? それに子供のころのあなたと同じように貧乏で苦しんでる人はたくさんいるんだから、...

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