2023-03-29

山笑う、と言う季語を実感した話

山間部へ旅行した。

桜が満開のこの時期、山々の中に薄桃がまじり、木々の葉も同じ緑といえど、深さがそれぞれ違う。山が明るく見えた。春が来た、ということはこの事か、と実感した。

冬の頃の緑は黒く、深い。

春の季語で「山笑う」と言うのがあるけれど、初めてこの季語を作った人は天才だと思う。

冬の山は緑が深くなるばかりか、葉も落ち、雪も降る。山を見上げながら育ったけれど、冬になると一段と静かになったのは、目に映る風景によるものも大きかったと思う。

春になりその沈黙が終わると、何故か分からないけれどワクワクしていた。私はその風景を見ていたはずなのに、すっかり忘れてしまっていた。

さすがに幼い頃のようなワクワクはない。けれど久しぶりに見た、目の前に広がる風景が、手垢のついた表現だけれど自分に笑いかけてるように思えた。そして、まさに山笑う、とはこの事なのだな、そう思った。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん