その時は先に旅館の奥へと行ってしまったのだが、夕飯前に撫でさせてくれた。
その白い猫を撫でている間、少し離れたところにハチワレの猫がいることに気付いた。
声をかけるか迷ったけれども「触って欲しいなら、自分から人前に出てくるだろう」と思ったので、そっとしておいた。
翌朝、部屋から朝食会場に向かう途中のロビーでハチワレの猫が眠っていた。
可愛い。
眠っていたので、そっとしておいた。
あのハチワレの猫がこちらに向かって来て、足元で「にゃあ」と一鳴きした。
広げていた新聞を閉じて膝上を空け、「ここに乗る?」と聞くと、
スッと音も立てずに膝に飛び乗り、くるりと丸まった。
可愛い。
猫がこんなに可愛いとは。
撫でていたら眠ってしまった。
眠っている猫とともに写真を同行者に撮ってもらった(もちろん無音カメラで)のだが、
今まで見たことがないほどの満面の笑みの私が写っていた。
自分がこんなに猫が好きだとは思っていなかった。