昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいませんでした。
昔どころか過去、現在、そして未来のどの時点、どの場所においても、人類はおじいさんにもおばあさんにもなり得ていませんでした。
おじいさんおばあさんの不存在。
当然、加齢にともなって老いぼれていく人間の存在はありふれていました。
それをおじいさんおばあさんと呼ぶ、そう思って誰もが生きてきました。
けれども、真のおじいさんないしおばあさんと呼べる存在は、老いぼれただけの人類とはまったく異なる存在だったのです。
その真の姿を人類が知ることはありません。永遠に。
真のおじいさんおばあさんが認識される前に人類は滅びるからです。
しかしながら、この宇宙のどこかにはいます。
おじいさんとおばあさんが。
彼らはもちろん人類ではなく、
そのことを知る私も、
そしてあなたもまた、たった今人類ではなくなったのです。
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