「好きな食べ物はハンバーグです」
彼女はそう答えた。
周りの男子たちは笑った。
「ハンバーグとか、お子ちゃまかよ」
男子たちが茶化すと、少女は泣き出した。
彼女が好きなハンバーグ、それは父親の作るハンバーグだった。
父のレストランは海外のグルメ誌で紹介されるほどの有名店。
ハンバーグは看板メニューのひとつであった。
溢れ出る肉汁と濃厚なドミグラスソースが人気の料理だった。
そんな父親は1年前、交通事故で亡くなった。
自宅の冷蔵庫には、娘のために作ったハンバーグのタネが残されていたそうだ。
彼女にとってそれが最後の、父親のハンバーグだった。
夢は父のような料理人。
今日もスーパーでひき肉を買って、帰路につく。
Permalink | 記事への反応(0) | 20:00
ツイートシェア