2019-06-08

「好きな食べ物ハンバーグです」「お子ちゃまかよ」

「好きな食べ物ハンバーグです」

彼女はそう答えた。

周りの男子たちは笑った。

ハンバーグとか、お子ちゃまかよ」

男子たちが茶化すと、少女は泣き出した。

彼女が好きなハンバーグ、それは父親の作るハンバーグだった。

父のレストラン海外グルメ誌で紹介されるほどの有名店。

ハンバーグ看板メニューひとつであった。

溢れ出る肉汁と濃厚なドミグラスソースが人気の料理だった。

そんな父親は1年前、交通事故で亡くなった。

自宅の冷蔵庫には、娘のために作ったハンバーグタネが残されていたそうだ。

彼女にとってそれが最後の、父親ハンバーグだった。

夢は父のような料理人。

今日スーパーでひき肉を買って、帰路につく。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん