俺が我慢していればいいんだ。
俺さえ我慢していれば、家庭はうまく行くんだ。
俺が我慢していればいいんだ。
俺さえ我慢していれば、家庭はうまく行くんだ。
セックスレスどころか、手に触れるのさえ嫌がられているけれど。
俺が我慢していればいいんだ。
俺さえ我慢していれば、家庭はうまく行くんだ。
さて、この夫君のオウチには、リビングの真ん中にとても大きな穴があいており、たいそう強烈な異臭を放っておりました。
嫁子さんは何度も何度も何度も何度も何度も何度もこの穴を修理して欲しいと訴え続けているのですが、夫君はその穴にそっとレジャーシートをかぶせるのみなのです。
その穴を埋める事ができるのは夫君だけなのですが、夫君は面倒なのでやりたくありません。
レジャーシートをひいてやったんだから、それで我慢しろと思っています。
夫君は同僚に、いかに嫁がひどいやつで、いかに自分が虐げられているのかを切々と訴えました。
同僚たちもそれはひどい嫁だ、お前はがんばって耐えてかわいそうなやつだと同情してくれました。
しかしAさんがいいました。
「リビングの穴をなぜふさがないのですか?」
けれどもそれは多くの同僚のかわいそうに、かわいそうに、という声に紛れて夫君には届きませんでした。
いえ、届いてはいたし、自分でもうすうすわかっていたのですが、面倒なのでやりたくなかったのです。
Aさんも夫もリビングの穴をふさげばよい事は解っていたのですが、夫君はどうしてもそれを受け入れたくなく、全て鬼嫁が悪いという事にしたかったのです。
こうして家庭はどんどんきしみ歪んでこわれてゆくのでした。