私には好きな人がいる。同じ中学から上がってきた彼。彼は弱虫だ。子犬のような目をしている。殴るともっとかわいい目になる。
殴るのは主に二の腕。ダメージが蓄積すると腕が上がらなくなる。その日の気分でどれくらい殴るか調節できるのがいい。
時々はレバーも殴る。朝がけ一発入れると、一日調子悪そうにしている。かわいい。
彼は弱虫のくせに運動が得意だ。今はバスケ部の主将をしている。信じられない。始めて会った時は私より背が低かったのに、今では私を見下ろすほど背が高くなっている。そのくせ私が殴った時に、恨めしく睨み返す涙目だけは変わらない。
もしも私が、拳の代わりにそっと口づけしたらどんな顔をするのだろう。
しばらく彼を殴るのはやめられそうにない。