人もまばらになった夜のファミリーレストランで姉は、プリンを食べたいの、と、腫れた目を開いて言った。
私は、あの人と何かあった?と聞いた。あの人は疲れているの、と姉は返した。
每日とても忙しくて、夜遅くに、帰ってくるの。手を冷たくして。
姉の夫は根は優しいが、神経質で体も弱く、激務に耐えられるような人ではない。
ある夜、不燃ごみに捨てられたプリンのプラスチックケースを見て、姉の夫は言った。
お前は自由にできて、いいな。
私はあの人は、そんなふうに言わない人だって知ってるから、疲れてる、って知ってるから、何も言えない。
だからプリンを食べるのを止めたの。そういうことをしないようにした。姉はそう言った。
そういうこと、がどのくらいのことを含んでいるのか、私は聞かなかった。
姉がカフェラテのカップを下ろすのを待って、私は言った。私はおねえちゃんのことが好きだよ。
うん。知ってる。ありがとう。姉はかすれた声で、少し笑って、そう返した。
日本はかつての元気を取り戻そうとしている。
でも先に進む人達がいる一方で、取り残されてしまう人達もいる。姉と姉の夫がどうなるか、誰にもわからない。