まるで2分前にさよならを言った恋人の残り香みたいなもんだ。
幸せなような寂しくてそして、得られなくてイライラする。
小学生の時意味も無く、帰り道走った。誰もいない通りを走って帰る。誰もいないから自分が一位だと思える。だから全速で走った。あの時は、呼吸の苦しさや血の味、ランドセルの重さも心地よく感じた。
家の近くに来ると金木犀の匂いがしてきて、畑仕事をしている祖母が見えてくる。
祖母が顔を上げて「おかえり」としわくちゃの笑顔で迎えてくれて、まだ呼吸の整わない口で「ただいま」と言った時はとても幸せだった。達成感でたまらなくなった。
あの時はそんな事で達成感を得られていたのに。
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