2020-09-05

失われた半身

腫瘍とともに 母であることを切除した人間の下で

私は あの者の人生訓に 縛られた

赤貧と結核で 聴力の弱ったあの者は

私に 食事書物以外を 望まぬことを強いた

他人他人論理に基づくことは 私を社会から切り離すための あの者の説教切り札であった

夜中には 失われた半身の 記憶が蘇る

私にはかつて 愛する者がいた

私は 瞳を見れば吸い込まれ 魂の離れがたいような その者も私を観ている そうした幸福なひとときがあった

偶然の符号と 交わされる言葉のすべてに 不思議確信があった

あの人は 向日葵のような 輝かしい人だった

家へ帰ると私は 術後床に着く病人の 小言を聞いたが

あの瞬間を 永遠に感じたことを 思い出していた

  • 私は 無鉄砲や愚行を犯す 絶好の機会を逃した 今の私は 人生の春夏を経ず 秋を迎えたようなものだ あの人は 挫折して 苦しんで努力していると聞く 私の眼にはあの人が 今で...

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