2017-02-20

帰り道、駅から直結のショッピングモールに続く通路、左右には食品スーパーマーケット、行き交う人の数はまばら。通路の右端でも左端でもないところで足を止めて携帯電話で会話中の外国女性。側に小さめのトランク

中年男性が通りがかりに「真ん中で話すな」とかなんとか言いながらトランクを蹴っていく。声が出そうになる。息が止まる。女性は会話に意識が向いているのか気付いていない。あるいは気付いていない素振りをしてやり過ごそうとしている節もあるように見える。

見たくないものを見てしまった。男性を追いかけてその行為非道徳性自覚させて女性謝罪させようと思った。この小さな蛮行を見過ごすことはできないと思った。足を早めて男性に近づいて表情をうかがう。彫りの深い顔だけれど、数秒前に野蛮な振る舞いに出た痕跡をかすかに残す表情。別の機会にどこかですれ違ってもそのことに思いを馳せることはないであろう。なぜあんなことをしたのか。彼の心の動きを知りたいと思った。彼の日常を知りたいと思った。そして、知ることによって何がどうなるわけでもないという冷淡さも噛み締めていた。

男性を追ってエスカレータに足をかけかけてとどまる。人の波を避けるために半歩横に動く。男性の後ろ姿がやがて見えなくなる。振り向くと女性は立ち止まったまま会話を続けていた。

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