祖母の葬式はよく晴れていた。
祖母とは言ってもほとんど会ったことはない。一度だけ、父の葬式で会ったきりだった。
そのとき祖母は口を開かず、目も合わせようとはしなかったので、遺影で初めて顔を見たようなものだ。
それなりに多い弔問客の中で、僕が浮いているのは、僕が私生児だったからだが、馴れたもので特に何も思わない。ただ、手持ちぶさただったので家の外に出てみると、広い庭があった。
父はそれなりに名士だったとのことだが、それも会ったことがないのでよく知らない。ただ、母に養育費の振り込みは欠かさずしていたらしいので、几帳面だったか、トラブルを恐れていたのかが邪推できるくらいだ。
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名前を呼ばれたので振り返ると、兄がいた。
多分、兄だ。数人いる兄弟は皆、顔が似ている。
「君も中で飯を食いなさい」
「いえ、もうお暇しますので」
僕は事務的に答えた。なんというか、父の親族にデリカシーというものはないのか、僕を見てひそひそと話す声が消えないのだ。
お妾さんの、とか、図々しい、等々。どうも全体的には歓迎されていないようで、とても愛想を振る舞える空気ではない。
義理事は終わった。
僕を引き留める兄に、それでも帰る旨を伝えると、封筒を差し出された。
「ああ、どうも。ありがたくいただきます」
くれるなら貰う。
縁側沿いの障子戸を少しあけ、こちらを伺っている老婆達にも軽く会釈をし、僕は帰ることにした。
自分の家まで車で二時間だが、くるときよりはいくらか清々しい気持ちで車に乗り込み、早速封筒を開けると五万円入っていた。
儲けたな。
僕は鼻歌など歌いつつ、ゴキゲンで家路についた。
父親ならともかく、 祖母の葬式に、しかも父の死後なのに、なんで出向いたん? というより、誰が君を呼んだん? 交通費を渡してきた「兄」か?
なんでって、祖母の葬式だからじゃない? 父の家族にとっては腫れ物かも知れないけど、腫れ物には腫れ物なりの人生もあって、普通に生きているんだから、身内の葬儀に顔を出すくら...
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いや~僕も連絡無かったら行くこともなかったんだけどね。 誰や彼やいろいろ気を使ってくれるもんだね。関係はよく知らないけど叔母さん?かな。 一応、お孫さんだからって、連絡が...
うんもうさっぱりお前に興味なくなったからどうでもいいんだけどさ その古い一族の中でどういう人間関係や感情があってお前が呼ばれて出かけたのかな っていうとこを聞きたかったの...