「や、やめてくれ! 俺が何をしたというんだ!」
彼は株式会社渡邊抹殺の社員。日本から渡邊を抹殺することを仕事としている。
といっても、命を絶つわけではない。特殊な道具によって渡邊を渡辺に変えるだけだ。上司から紹介された渡邊のもとに向かい、力づくで渡辺に変える。それが仕事だ。
「おい、お前が渡邊だな。残念だが死んでもらう」
「ち、違う! 俺は渡邉だ!」
「ええい! 同じことだろうが!」
「見つけたぞ渡邉!」
「や、やめてくれ! 俺は渡邊じゃない! ほら、しんにょうの点の数が違うだろう?」
「お前のような奴がいるから名前登録が面倒になるんだ! 死ね!」
「ぎゃあああ! 戸籍登録と印鑑登録をやり直さなきゃいけなくなるぅぅ!!」
最初に渡邊抹殺が登場したとき、賛否両論だった。「全部『辺』に統一されれば書くのが楽になる」「外字を作る仕事が減ってしまう」「いちいち外字登録しなくてもよくなった」「印鑑を作る仕事が減ってしまう」などなど。
しかし、世論はおおむね肯定的だった。簡単な登録ならともかく、正確な感じを書くことが求められる行政の書類は異体字が多いほど面倒だからだ。社員である彼もそう考えていた。
ある夜。彼は夜道で怪しげな道具を持った男たちに狙われた。
先生、元ネタがわかりません。