2009-02-07

困ったなあと思っている

義姉と同居している。いや、正確にはしていた。

夫は16歳年上で、義姉はさらに12歳年上なんで、私から見たら28歳も上。日本の古き良き伝統に従って、「年長者」として、それなりに丁重にもてなしてきた。「留守番掃除もしない。私が家事やるならお金もらうわよ」と言うので、家事の負担は何もさせず、義姉宛の荷物を部屋まで届け、お客を取り次ぎ、町内会の付き合いやら、ゴミ置き場の掃除当番やら、黙ってやってきた。

だけど、義姉から返ってきたのは、嫌みと嫌がらせ子供が泣いていれば寄ってきて「泣いてやんの、バーカ」とののしる家庭菜園を作っていれば「虫が沸いてるじゃないの」と収穫期の小松菜殺虫剤をかける。水音に驚いて飛び起きてみれば、夫が下から窓にホースで水を当て、義姉が窓ガラスを拭いていた。場所は夫婦の寝室だ。そのときばかりは「夫婦の寝室に勝手に入り込んで何やってるんですかっ」と怒鳴りつけてやった。反省するかと思えば、その後、寝室の写真を撮って雑誌に送っていたことが判明した。義姉は「猫がベッドに乗っている写真だ」と言ってわるびれもしない。

実は、夫は二度目の結婚である。前の結婚のときの話を先妻さんに聞いたのだが、休みたびに「義姉のところに行く」といって夫が出かけていくのが嫌だったそうだ。そりゃ、新婚早々休みたびに夫がいなくなったら、誰だって寂しがるだろう。夫の父親は夫が15歳のときに、夫の母親は夫が29歳の時に亡くなっている。それから、夫と義姉はたった2人の兄弟として都会の片隅で助け合ってきたのだ。義姉と夫の結託が強いのはしかたない。本当に本当に嫌な奴だけど義姉も込みで夫と付き合おうと、義姉の仕打ちに我慢してきた。

ところが、夫が不治の病におかされた。余命6カ月だという。入院したら主治医先生が病状について説明してくれるという。もちろん、義姉を誘った。さぞや、弟の心配をしているだろうと思った。返事は「ガンなんでしょ? 父も母もガンだったから、わかってるからいいわ。嫌なこと聞きたくないの」と言い放って来なかった。「それより、海外旅行の予約があるのよ。キャンセルもったいないから行くわ」と言う。「あの、半年と言われて入院して、3日で亡くなった人もいるんですよ? ご旅行にいかれてる間に亡くなることもありますよ」「旅行先に連絡されても、どうせ告別式に間に合うようには帰って来られないから、旅行が終わるまで死んでも知らせないでね」「死んで、葬式して、お骨になってしまってていいんですか」「いいわよ」というわけで、義姉は旅行に出発した。まあ、その後もいろいろあったのだけど。キリがないので。

夫は結局4カ月入院した。私は夫の側を離れる気になれず、出来るだけ側にいた。義姉は1時間ほどのお見舞いを7回していった。

夫が亡くなってから、しみじみ義姉と同居なんかするんじゃなかったと思った。出て行けと言ったのだが話し合いに応じないというので、弁護士を雇って家庭裁判所に持ち込んでもらった。さすがに裁判所の呼び出しには応じたし、他人が入るとあまり無茶なことも言わないので、そのまま話を進め、元々玄関と廊下だけ共有の2世帯住宅だったのを、完全分離してもらうということで双方合意となった。

ところが、どうも義姉は「完全分離」の意味がわかっていないようだ。あと5日で工事が終了し分離するというのに、まだ、こちらのスペースに義姉の物が転がっている。今まで義姉は何か気にいらないことがあると嫌がらせをしてきた。コンポスターのふたを隠したり、猫をいじめたり。義姉に文句を言えば、今度は夫にお鉢が回り「おまえ、ちょっと我慢してくれ」という話になるのが嫌で、嫌がらせに対しては目をつぶってきた。どうも、義姉は私が文句を言わない理由を勘違いしているらしい。嫌がらせをされるのが嫌だから、仕返ししないのではない。お鉢を回される夫が気の毒だったからだ。もう、夫はいない。いくらでも仕返しできる。

先日、一周忌をやった。義姉も呼んだ。おだやかにイベントが終わろうとしたとき、私のいとこが夫の病状について質問してきた。亡くなったばかりのときは、こちらもいろいろと緊張していて、あまりしっとりとした話はしなかったので、詳しく説明しようとした。その瞬間、義姉が口を挟んできた「私の主治医に弟の病状話したところ、○○という病気だって。いっぺんでわかってくれましたよ」と。

あんた、病状の説明、聞きに来なかったじゃないか。弟の病気に関心持たなかったじゃないか。私にとって大事なものをどれだけ踏みにじれば気が済むんだ。

いや、わかってる。あんたはキレイなことがしたいだけだ。「主治医先生に病状を聞きに行く」という「嫌なこと」はしないけど、遺族として「親戚に病状の説明をする」という「楽しいこと」はしたいんだよね。

だけど、義姉がこういう態度を取るたびに、豆腐の角で頭ぶつけて死んでーーと思う。

このおちゃらけ女に、私の大事な物を踏みつけさせない手段はないだろうか? やはり、豆腐の角……。

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