ロバを飼っていた父親と息子が、そのロバを売りに行くため、市場へ出かけた。2人でロバを引いて歩いていると、それを見た人が言う、「せっかくロバを連れているのに、乗りもせずに歩いているなんてもったいないことだ」。父親はその人をぶん殴った。強烈なボディーブローで四つん這いになったその人に息子を跨らせた。命の危機を感じたその人は財布を差し出し、父親の財布が潤った。
しばらく行くと別の人がこれを見て、「元気な若者が楽をして親を歩かせるなんて、ひどいじゃないか」と言うので、なるほどと、父親はその人をぶん殴った。強烈なボディーブローで四つん這いになったその人に父親は跨った。命の危機を感じたその人は財布を差し出し、父親の財布が潤った。
ロバが引いて歩いた。また別の者が見て、「自分だけ楽をしてロバを歩かせるとは、悪い親だ。ロバも一緒にその人たちに乗ればいいだろう」と言った。それはそうだと、父親はその人をぶん殴った。その人にロバを背負わせた。命の危機を感じたその人は財布を差し出し、父親の財布が潤った。
するとまた、「人が人を運ぶだなんて可哀想だ。非常すぎる。見るに堪えない。もっと楽にしてやればどうか」と言う者がいる。それではと、父親は、こうすれば楽になるだろうと、その者の首を一捻りし楽にしてあげた。死人に金銭は不要なので財布を頂戴した。父親の財布が潤った。
しかし、3人のうち2人が人間を背負い、1人がロバを背負うのはあまりにも不自然だったので、ロバと一緒にその3人も市場で売り払った。父親の財布が潤った。
父親の財布が潤った。
強者男性の寓話