暑すぎず寒すぎず、快い春の風に包まれるこの季節の午後が、いちばん長く時間を感じられる。
休日の午後、彼女と一緒に公園へ行く。
なにをするわけでもなく、なにを話すわけでもなく。
ただ一緒にベンチへ座り、揺れる枝葉に歩く雀を見ながらぼっとする。
目立ちはじめた新緑に、柔らかい日差しを感じて笑い合う。
時計の針はいっとき仕事を忘れ、肌で世界を感じる午後の春。
渡し合うことばに意味はなく、意味のないことばが絆となって現れる。
鳥のさえずりが優しく耳を撫でて、なにも考えず、なにも思わないのに幸せを感じる。
彼女が隣で微笑み、増田は思い出す。
幸福というのは、二人で時間を止めることだということを。
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