フィクションに対して考えを巡らすというのは、とても奇妙だと思う。よく出来ていても作り話。そこから何かを読み解こう、何かを持ち帰ろうというのは、絵に描いた餅を食べようとすることに似ているかもしれない。
でも不思議なもので、現実の出来事よりもフィクションの中の出来事、人、物語の結末が、リアリティをもって迫ってくる時がある。なぜ事件は起きてしまったのか。あの人の言葉や表情の意味は何だったのか。物語はなぜあの結末に行きつかなければならなかったのか。
考えても物語は変わらない。現実の世界にも変化はない。あるとすれば、考えた自分が変わること。フィクションから持ち帰った何かが、自分の頭の中を変える。メタな体験が、自分の世界だけを変える。