通り過ぎる俺は横目でそいつらを眺める。俺のことを笑ってるわけじゃない。アイツラは俺の方なんて見ていない。だから大丈夫だ。
逆立ちした犬と緑色のシャツを着た飼い主とすれ違う。犬に服を着せるなんて傲慢も良いところだ。お前だってそう思うだろ。
犬がワンと叫ぶ。犬は喋らない。犬の顔を通して俺の頭の中の俺が頭の中の俺に話しかける。
お前こんな所で何してるんだ?
俺はどこにも居ない。どこにも行けない。世界は平らで、俺が収まるべきくぼみはどこにも無かった。
夕暮れが俺と誰もいない世界を包む。
孤独な夕暮れが俺が収まるべきくぼみだった。世界に俺のためのくぼみが無かったから、俺が俺のために用意した、保証されていない独りよがりのくぼみだった。