≪ 前 「市長、こちらの書類にサインと判を」 「はー、やれやれ。ある意味で尤も重要なのに、尤も簡単な仕事なんですよね。政治システムのバグだと思うんですよ。放置せずデバッグ...
≪ 前 この場における、市長の認可は通例的なものにすぎなかった。 既に各役所で審査は終わっており、市長の考えうる懸案事項は通過済みだからだ。 市長が七面倒な人格者でも町が...
≪ 前 昼飯を買ったが、未だ結論ではない。 このまま帰れば、何となく判を押して終わりだろう。 最後の抵抗とばかりに、イートインコーナーで昼食を済ませることにした。 「いた...
≪ 前 「ほぅ、マイ箸ですか」 市長は思わず声をかけた。 別に彼から箸の矯正について意見を仰ぐつもりではない。 ただ箸を綺麗に持つ者として、その“趣”を知りたかったんだ。 ...
≪ 前 ここにきて、紳士は相手が市長だったことに気づいたようだ。 「そうですが……どうかしましたか?」 「い、いえ、どうもしません。では、私はこれでっ……失礼します」 す...
書籍化したら「増田みたいなネットのゴミ捨て場か本が出た!?」ってな感じでちょっとしたムーブメントが起こりそうで楽しめそうなんだけどなあ。
もうそろそろ山場かな
≪ 前 箸の持ち方を授業で徹底的に教えるというニュースは市内に轟き、そして他の学校も見切り発車気味に真似しだしたんだ。 そして広がりを見せると授業内容は最適化されていき、...
≪ 前 この授業での様子は市内の新聞でも取り上げられた。 俺はそのことを、行きつけの喫茶店で知った。 あの時の会話を弟が聞いていたのかと気づいたのも、この時になってからだ...
≪ 前 こうして、弟の学校で箸の持ち方が徹底的に教えられることに。 「まず、一本目の箸を鉛筆を持つ時みたいにして。この部分が動かないよう固定させるのがベスト」 「鉛筆の持...
≪ 前 そして、これも弟たちだけの話では終わらない。 このやり取りを学級内でやっているということは、教員達の耳にも必然的に届いた。 つまり、今度は教員や保護者の間で箸の持...
≪ 前 そして結局の所は、俺自身この件について心根ではどうでもいいと思っていたりする。 どうせ、このやり取りも今日だけで終わるんだ。 よくある仲間内での些細な諍い、日常茶...
≪ 前 「この持ち方が正しいのは箸が食べ物を掴む食器としての役割があるからだ。その持ち方で支障ないって言ってるが、それじゃあゴマや小豆をつまめないだろ」 「そのあたりは掬...
≪ 前 「音を立てるほど勢いよく啜るのは、麺に汁が絡んだ状態で口に運ぶためだ。物事には理由がある。その理由を無視して、従来のやり方を抑え込む方が愚かだ」 「えー、でもそれ...
≪ 前 今にして思えば、きっかけは何気ないものだ。 よく連れ立つ仲間達と、自宅で軽い昼食を摂っている時だった。 「袋麺を作るだけで、妙に自信満々だった時点で怪しく思うべき...
昔々、どのくらい昔かっていうと、フォークが二又しかなかった時代。 この頃のフォークは使い勝手が悪く、上流階級の人々すら未だ手づかみが基本だった。 手づかみで食べる方がマ...