ひどく寒い日でした。
この寒さと暗闇の中、一人のあわれなおじさんが道を歩いておりました。
おじさんは手に一たばのパンティーを持っていました。
日がな一日、誰もおじさんから何も買いませんでした。
寒さと飢えに耐えかねたおじさんは、売り物のパンティーを一枚ずつかぶっていきます。
やがておじさんは喜びに包まれて、高く、とても高く飛び、
もはや寒くもなく、空腹もなく、心配もないところへ――神さまのみもとにいたのです。
けれど街角には、夜明けの冷え込むころ、かわいそうなおじさんが座っていました。
口もとには微笑みを浮かべ、 壁にもたれて――凍え死んでいたのです。
おじさんは売り物のパンティーをたくさんかぶり、体を硬直させてそこに座っておりました。
「あったかくしようと思ったんだなあ」と人々は言いました。