2021-04-03

パンティー売りのおじさん

ひどく寒い日でした。

この寒さと暗闇の中、一人のあわれなおじさんが道を歩いておりました。

頭に何もかぶらず、下に何もはいていません。

おじさんは手に一たばのパンティーを持っていました。

日がな一日、誰もおじさんから何も買いませんでした。

わず一円だっておじさんにあげる者はおりませんでした。

寒さと飢えに耐えかねたおじさんは、売り物のパンティーを一枚ずつかぶっていきます

やがておじさんは喜びに包まれて、高く、とても高く飛び、

もはや寒くもなく、空腹もなく、心配もないところへ――神さまのみもとにいたのです。

けれど街角には、夜明けの冷え込むころ、かわいそうなおじさんが座っていました。

口もとには微笑みを浮かべ、 壁にもたれて――凍え死んでいたのです。

おじさんは売り物のパンティーをたくさんかぶり、体を硬直させてそこに座っておりました。

「あったかくしようと思ったんだなあ」と人々は言いました。

おじさんがどんなに美しいものを見たのかを考える人は、 誰一人いませんでした。

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