夜、世界は眠るように、静かな虫の音と蚊帳のとばりに包まれる。昭和生まれの扇風機が送る、ゆるやかな風がわたしの頬を撫でて、通っていく。その風は方向を変え、次は黄色と緑をあしらった風鈴を叩く。チリン、チリン、チリン。かりん、かりん、かりん。風は薄いガラスの砕けてしまいそうな危うい音を叩く。それはどうして涼しく、気持ちいいのだろう。氷の冷たさなのだろうか、それともスイカを冷やす水の、きらきらとしたせせらぎなのだろうか。
Permalink | 記事への反応(0) | 21:52
ツイートシェア