身近な人に奇妙な癖の持ち主がいる
それは「ドアや扉の類を閉じるとき少しだけ隙間を空けてしまう」というもの
ドアは必ず数センチほど開けるし、箪笥や机の引き出しの類も指が入る程度の隙間をどうしてもあけてしまう
一度当人を注意してきちんと閉めさせようとした事があったのだが、なぜか相当な躊躇をしていた
「トイレを出る時のドアはきちんと閉めてといつも言ってるよね」
「うん…」
「でも、また少しだけ隙間空けてるじゃん」
「…」
「とにかく、ちゃんと閉めて(ドアを指さしながら)」
「わかった…」
目の前のドアを10cmほど軽く押すだけで良いのに、それだけになんと数十秒を要した
途中、私の方を振り返って、私に「閉めなくていいよ」と言って欲しそうな素振りを見せたが、私は何も言わずドアが閉まるのをひたすら待った
それを察したのか、相手は観念したかのようにドアを押し込み、ガチャリと音をさせて完全に閉じられた事を示した
「今度から気をつけてよ」
しばらくしてトイレへ入ろうとしたら、なんとドアが少しだけ開いていた
「トイレ、また入ったの?」
「え、いや…」
「トイレのドア、また開いてるんだけど」
「え、それは…」
「また開けたの?」
「え、いや…」
「さっききちんと閉められてたのに、どうして開いてるの」
「…う、うう」
どういうわけか、相手は立ち尽くしたまま嗚咽を漏らし始めた
なぜいつも隙間を空けようとするのか、何度も尋ねるのだが下を向いて黙りこくってしまう
どうにかならないものだろうか
おそらく密室に対する恐怖症だろう
換気?
子供の時に同級生に閉じ込められた経験があるんだよ