2018-01-17

おいしいパンの作り方

ボクはおいしいパンを食べたかった。

おいしいパンを食べている友達が、とても嬉しそうだったから。

ボクのお父さんお母さんがくれるパンは、いつも味気なかったのだ。

今となっては、あの二人もおいしいパンの作り方を知らなかったんだな、ってわかるんだけど、ボクがそれに納得できるようになるのはまだ先の話。

ボクはおいしいパンを食べたかった。

でも、友達のおいしそうなパンを欲しがることはできなかった。それはボクのためのパンじゃないからね。

ああ、おなかが空いた。

おいしくないパンしか食べてなくても死にはしないけど、でもおなかがいっぱいになることもなかったんだ。

からボクは、おいしいパン自分で作れるようにならなきゃ、って思った。

けれども、おいしいパンを作るのはとてもとても難しかった。

なんせ食べたことがないから、何をどうしたらおいしいのかさっぱりわからない。

出来上がるパンはどれもおいしくなくって、ボクはおなかを空かせるばかりだった。

そしてある日、限界がきた。

ボクはおいしいパンを食べたい!そう心から叫んだ。

そうしたら。

ボクのためにとてもおいしいパンを作ってくれる人が現れた。

その人のパンは本当においしくておいしくて。何もかも飲み込んでしまいそうだった僕のハラペコがすっかりいっぱいになってしまったんだ。

そしてそれから、ボクも少しはおいしいパンを作れるようになってきたのだ。

ボクはあの人に出会えなければ、一生おいしいパンを知らないままだっただろう。

そして自分の子供にも、おいしいパンを与えられないままだっただろう。

全てはあの人に出会えた幸運だった。

そしてだからこそ、ボクにとってのあの人に出会えないハラペコ仲間たちを忘れられない。

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