冬がすきだ。
凍てつく寒さの冬、暖かくした部屋で飲むミルクココアは至福の味だ。
ひとりソファに座り、ほくほくと湯気をたてながらミルクココアを飲む。
ぼくはあの感覚を忘れることができずに、春や夏や秋を淡々と過ごしている。
夏でもクーラーを強く効かせた部屋に遠い冬の気配を探しながら、ミルクココアをいれることがある。
しかしいくら室温を下げても、いまは夏だということを身体は忘れてくれなかった。
ミルクココアをはふはふと飲んでいると、汗をかいてしまうのだ。こんなのは冬じゃない。
そうして毎年、夏のあいだに冬の気配を感じることはできずにいる。
いま、まだ少し暑い秋の夜長を、文庫本とほくほくのミルクココアで過ごしている。
汗をかきながら、いよいよくるぞ、とすこし興奮している。
はやく冬にならないだろうか。ぼくはずっと待っている。