立派な黒柿の木をみて、大工の親方はっつぁんはちょうどいま建てている駿河屋さんのご隠居の離れ家の床柱にしようと考えます。
「見てみろ、あのまっつぐな幹。あれなら五寸、いや五寸五分くれえの立派な床柱になるぞ。
うちのがご隠居のためにりーっぱな黒柿の床柱を見つけてきました。ぜひぜひにとな。」
寅吉だって、親方が儲かればそれにこしたことはない。ぱぱーっとはしってご隠居に伝えます。
ご隠居も「そりゃありがたい」と二つ返事ででしたので、次の日、二人は大八車をひいて、老人のうちへ向かいます。
「昨日の柿の木をひきとりにきやしたー。」
声をかけても返事がない。裏手に煙が上がっているので、回り込んでのぞいてみると、柿の木は薪の小山になっています。
「おやおやはっつぁん。薪にしようかと割ってみたけれど、火をつける前から煤けてる木なんてめずらしくてね。
さっそく火を付けてるよ。」
しまったと思ってもあとのまつり。
はじめからかくかくしかじか、いくらで譲ってくれといっておけばいいものの、こうなってしまっては、ご隠居に謝るしかありません。
しかたが無いので焼け残った切れっ端をもってご隠居のところへ。
「ご隠居、申し訳ありません。黒柿の床柱、ちょっと細くなっちまいまして。」
「五寸五分といっていたが、五寸か?」
「いえ、もう少し細く・・・」
「四寸五分?」
「いえ、もう少し細く・・・」
「三寸五分?」
「いえ、もう少しだけ・・・」
「二寸五分?」
「いえ、もう一声」
「もう一声じゃないよ。一寸五分?床柱にしては細すぎやしないかね」
「一寸どころか、四分(シブ)だけ残して火柱になりやした。」
何故か不意に新作落語が頭に浮かんでしまった。 理由は不明。 趣味で小説は書くが、落語はたまにテレビで見るくらい。 清水義範は大好き。 とりあえず概要だけ。詳細はいつか詰めれ...
立派な黒柿の木をみて、大工の親方はっつぁんはちょうどいま立てている駿河屋さんのご隠居の離れ家の床柱にしようと考えます。 「見てみろ、あのまっつぐな幹。あれなら五寸、い...