2016-11-20

まみちゃんは何もできない

まみちゃんは何もできない。

料理砂糖と塩を間違えるし、アイロンがけは服を焦がすし、まみちゃんはやることやること失敗する。まみちゃんは本当に何もできない子だ。

失敗を笑って流して料理掃除洗濯も俺に任せきりで「もう

本当にまみちゃんは何もできないなぁ」と言うとまみちゃんは頬に柔らかなくぼみをつくり、笑う。

まみちゃんは何もできない。

まみちゃんは生きることもできない。

癌だった。気づくのが遅かった。余命3カ月だった。まみちゃんは「私ってほんとダメだねぇ」と笑った。

3か月はまみちゃんとできるだけ一緒に過ごすようにした。まみちゃんが好きなシチューを作ったり、まみちゃんの好きな柔軟剤を使ったり、何もできないまみちゃんの代わりに俺は色々やった。

でもまみちゃんは余命宣告通りに逝ってしまった。俺のために少しくらい長生きしてくれたっていいだろう。まみちゃんは本当に何もできないんだから

でもまみちゃんは俺の隣にいてくれることだけは最高に得意だった。

まみちゃんが笑うから俺は何でもやれそうな気がした。まみちゃんがいたから俺は生きていけた。朝ごはんを作って、仕事に行って、できるだけ残業しないように早めに仕事を終わらせて、まみちゃんがいる家に帰るためにならなんだって頑張れた。一緒の布団に入れたら1日の疲れなんてふっとんだ。まみちゃんが隣にいるととてもよく眠れた。

何もできないまみちゃん。

でも俺はまみちゃんがいないと、何もできないんだよ。

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