吾輩は猫である。名前はまだ無い。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
(中略)
「もうよそう。勝手にするがいい。がりがりはこれぎりご免蒙るよ」
と、前足も、後足も、頭も尾も自然の力に任せて抵抗しない事にした。
次第に楽になってくる。苦しいのだかありがたいのだか見当がつかない。
水の中にいるのだか、座敷の上にいるのだか、判然しない。
どこにどうしていても差支えはない。ただ楽である。
否楽そのものすらも感じ得ない。日月を切り落し、天地を粉韲して不可思議の太平に入る。
吾輩は死ぬ。死んでこの太平を得る。太平は死ななければ得られぬ。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
http://hagex.hatenadiary.jp/entry/2015/11/18/110000
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