駅のホームまでの階段を上がる。
出かける時に使う駅の、いつものコース。
烏龍茶を選ぶものの、財布に入ったSuicaが読み取られないようだ。
何度も接触面に対し財布を付けては離している。
僕は横目にそれを眺めていた。
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さっき改札を通る時に取り出したままのSuicaを、彼女の手と財布を押し出す形で接触面にかざした。
ピピッ……
ガタッ
驚いてこちらを見る彼女。
「えっ、あの……」
「どうぞ」
気まずくなりそうで、そのまま立ち去って、ちょうど到着した電車に逃げ込んだ。
動き出した電車の中から、呆然と立ち尽くす彼女と目が合って、彼女は何度もおじぎをしていた。
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童貞なので動揺し、逆向きの電車に乗ってしまい 会社を遅刻しクビになり人生詰んでしまった。