2014-09-13

読めないSuica

駅のホームまでの階段を上がる。

出かける時に使う駅の、いつものコース。

階段の先に、Suicaで買える自販機がある。

今日は、誰かが飲み物を買っているようだ。

若い女性だった。何やら様子がおかしい。

烏龍茶を選ぶものの、財布に入ったSuicaが読み取られないようだ。

何度も接触面に対し財布を付けては離している。

僕は横目にそれを眺めていた。

----

彼女が何度も繰り返すうちに、僕は自販機に向かった。

さっき改札を通る時に取り出したままのSuicaを、彼女の手と財布を押し出す形で接触面にかざした。

ピピッ……

ガタッ

驚いてこちらを見る彼女

「えっ、あの……」

「どうぞ」

気まずくなりそうで、そのまま立ち去って、ちょうど到着した電車に逃げ込んだ。

動き出した電車の中から呆然と立ち尽くす彼女と目が合って、彼女は何度もおじぎをしていた。

----

という妄想までをしたところで、彼女は財布から小銭を出して烏龍茶を入手した。

今日も僕の人生は何も動かないままなのであった。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん