近所でも立派な作りだと評判の、とある一軒家の二階南側にある、部屋の片隅に屑籠がありました。
屑籠の中には、まだ液体の残っている、温く炭酸の抜けたコーラのボトルが、ムスッと顔を強ばらせて転がっておりました。
「毎度毎度飲み残しやがって、この家の坊主は」
コーラがいつものようにブツブツと愚痴をこぼしていると新入りが頭上から落ちてきました。
「やあ、コーラくんじゃないか。久しぶり、この家の前にある自動販売機以来だね、それにしても君はなぜそんなにふて腐れているのかい?」
新入りの空になったボトルが微笑みながらも心配そうな顔色で尋ねました。
「おお、アクエリアス。なぜ不機嫌かって?俺を見ればわかるだろう。お前たち非炭酸飲料はいいよな、俺たちなんて炭酸が抜ければ飲み残っていようがそのまま屑籠行きさ」
コーラはアクエリアスを恨めしそうに見ながらぶっきらぼうに答えました。
「けれど、僕らの中で一番人気があるのは君だろ?それで十分じゃないか。君が自動販売機から出ていって一週間、僕が君と再開するのにかかった時間だよ」
「確かに一番売れてはいる、でもな、裏返せば一番捨てられているんだよ」