ずっとスマホをいじっていて、ふと顔を上げると目の前に見知らぬおじいさんが立っていた。
そのおじいさんは「優先席の近くで携帯電話を使うな」と文句を言ってきた。
うっとうしく思いながら「そんなの迷信ですよ」と言って取り合わなかった。
すると、おじいさんはいきなり俺の手を握りしめ、ぞっとするような声で言った。
「ほら、こんなに冷たい」
その時、車両に飛び込んできた男が、おじいさんの手を振り払った。
「そこまでだ」
聞いたことのある声。
「破ァ!!」
Tさんが叫ぶと、おじいさんは血色がみるみる良くなって昇天していった。
後から聞いた話では、何年か前に電車に乗っているときに心臓麻痺で亡くなった老人がいたらしい。
やっぱり寺生まれは凄い。俺は改めてそう思った。