朝は6時に起きて、団地の中庭を歩くのが習慣になった。まだそんなに暑くはなく、心持汗ばむ程度だからむしろ気持ちいい。中庭は広く一周800メートルもあり、丁度10分で回れる。同じように朝のウオーキングをする人たちが10人くらいはいて、顔ぶれが決まっているようだ。
反対方向から回ってきた女性が、私に向かって手を挙げて笑っている。はて、どなただったかしら、とりあえず会釈を返したものの、見覚えがない。その人は右手を振ってみせて、「おんなじものを探してますね」と笑う。二人とも同じような草を握っていた。「これ、大好きなんですよね」「でも、みかけなくなりましたよねえ、以前はこの辺、猫じゃらしだらけだったのに」。
芝刈り機で刈り取られているうちに年ねん少なくなっていた。今ではなかなか見つからない。いつの間にか生態系が変わってしまったのだ。テニスコートでも西洋タンポポだらけになっている。