実家に帰っても「お客さん」で、最早くつろげなくなってしまった。
故郷は帰る度に姿を変えている。
発展しているのなら良いとも思えるのだが、過疎が進み、人は減り、よく立ち寄っていた商店は空き店舗。
かつて毎日眺めていた海には、見慣れたフェリーや高速船の姿がない。航路は廃止されてしまった。
樹木が成長したり枯れたりしたのだろうか、山の形でさえ思い出のものとは微妙に違う。
所々昔の面影を残しているのが余計に寂しい。
酒で例えるのならば、銘は同じまま味だけ劣化してしまったようなものだろう。
実家への帰省から戻り、自宅の賃貸マンションの玄関を開けて嗅ぎ慣れた匂いを感じた時に「ああ、帰ってきた…」と心の底から安心を覚えた。
そこではっきり気付いたよ。
もう故郷は帰る場所ではなく、訪ねる場所になったのだと。
俺の場合、かつて毎日眺めていた海がない(苦笑) これから人口シュリンクしていく日本、大規模開発も行われなくなっていく日本では、目の前の海が埋め立てられて土地になる貴重な...