http://anond.hatelabo.jp/20081116133036 の新人君が、昔の自分にほんのちょっとだけかぶるところがあるなあと思ったので、空気を読まずにつらつらと自分語りをしてみる。
数年前、勤めていた職場が突然無くなったことがある。そのころ俺は、親元を離れて社会人として働き出してから一年経つかどうかの生きていくこと自体にわりと必死な頃で、不幸なことに金の蓄えが殆ど無い時期だった。そして来月からは収入が無くなってしまう。このサバイバルは思い起こすと稀有で貴重な体験だが、当時は社会に対して大きく失望し、ただただ途方に暮れるしかなかった。
当時は今にも勝る不景気、いわゆる就職氷河期の真っ只中で、普通の就職、転職市場に対して得も知れぬ失望感がある上に、仮に面接を受けて首尾よく採用となっても、給与がもらえる前に俺の貯蓄が底をつくかという状況だった。しかしなぜか危機感をそれほど持っていなかった俺は悠長に、そして高望みしつつ職探しを続け、程なくして予想通りに金の蓄えは無くなり、八方塞がりとなった。
もうどうしようもなくなったが、有り余る情けなさから親には相談できず、結果として友人に一ヶ月分ほど生活費の無心を受ける。半年以内に全額を返さないと小額訴訟を起こす、というエールを受けて俺はようやく職探しに本腰になった。
本腰にはなったが、とはいえすぐに金が必要だったので、さっさと働きだすことができる方法を選択せざるをえなかった。ネットで調べるうちに派遣会社というものが就労するには手っ取り早そうだということを知り、某社へ早々に登録、仕事を斡旋してもらうことにした。
フットワークの良い派遣会社だった。登録フォームから送った翌々日にはその会社の支店へ行き、営業担当を相手に色々と自分のできることをアピールした。パソコンはかなり得意だと伝えた。営業担当は「それならばすぐに仕事を紹介できますよ」と言った。実は当時の俺が得意だったことは、パソコンを扱う仕事をすることではなく、秋葉で買ったパーツでパソコン自体を組み立てることだったが、そこはあえて伝えないでおいた。
それから一週間ぐらい、俺はその営業担当に連れられて、名前を聞くだけでも萎縮してしまう超有名な会社の一室で顔合わせと称した面接を受けていた。面接相手は嫌味な男で、しきりに営業担当に対して前任者が辞めたことについての愚痴を言っていた。嫌な奴だと思ったが背に腹は変えられないので、みなぎるやる気を必死にアピールした。一瞬だけ俺は松岡修造のようだった。とにかく金が無いのですぐには辞めないという、自信を超えた確証があった。
そしてめでたく一つの仕事が与えられることになる。サーバの運用監視というものだった。
サーバの運用監視といっても、一般に言われるようなラックの立ち並ぶデータセンタの如きではなく、全国各地の拠点に配置されているタワー型のファイルサーバをリモート監視、保守するという特定の顧客に特化したものだった。正味なところトラブルは年に一度あるかないかだが、契約上どうしても監視を続けなくてはいけないそうだ。サーバ自体も相当古かったが、当分リプレースの予定も無いそうで、つまり数年は安定した身分が保証されている業務ということになる。やった、これで借金は返せる。俺の心は小躍りした。
で、肝心の仕事内容だが、これがまたベタベタのルーチンワークで驚いた。決まった時刻に決まった操作でサーバの正常動作を確認し、excel のワークシートを印刷したものに丸を付けていくだけの、まさしく刺身の上にタンポポを乗せるかのような仕事だった。ごくまれに腐食したタンポポが見つかったりもするが、そこは既に定められたフローで対処し、新しいものと交換すればよい。
個人としてどう動けるかどうか、そんなものは全く関係がない仕事で、歯車大募集という風情だ。前任者が退屈すぎて辞めたというのは容易に想像できた。ただ幸いなことに、当時の俺は個としての評価に価値観を見出すことはなく、どころかエンジニアとして大手の企業に潜り込めただけで世界が大きく開き、前職よりも自身が尊大になったと感じていたのだった。
最初の三ヶ月は充実していた。エンジニアという肩書きのもとに仕事をしているというだけで自分に酔うことができた時間だった。そして俺は excel 製のチェックシートに綺麗な丸を書くことばかりが早くなっていった。
俺の上司と言われる人間は、ひどく適当で放任だった。彼は当時まだ三十半ばであったが、既にこの大きな会社で、己の生涯を終えると決断しているが如きで、ルーチンワークの正確さと、仕事の合間を見てさりげなく、かつ頻繁に煙草を吸いに行く挙動と、後方を通る人影を警戒しつつのネットサーフィン技術については目を見張るものがあった。そんな彼を俺も見習い、業務中にいかにさりげなく 2ch を見るかを模索したものだった。
そんな彼の元で、俺は自由闊達に教育された。基本的に日常業務さえ過不足なくこなしていれば、あとは時間の使い方を制約されることもなかった。その日常業務と呼ばれるルーチンワーク自体は二時間足らずで終わるので、図らずも俺は一日に六時間もの自由な時間を与えられることになった。次第に 2ch を見ることにも飽きていった。
そして半年、とうとう持て余した暇を浪費できなくなった俺は、遊び半分でコードを書き始める。ネットの情報をもとに試行錯誤を経て、初めて作ったのは WEB ベースの監視チェックシートだった。そう、あの綺麗な丸をつけなきゃならないやつだ。定時になると決められた手順でサーバの稼動確認を行い、正常動作が確認できた時は勝手に丸が付くようにした。最初の一ヶ月ぐらいはこっそり運用し、いろいろと修正を加えて動作を安定させた。
さすがに印刷すると excel と少し体裁は変わるが、上司の彼はそれを好んで使ってくれた上に、顧客への提出フォーマットを変えることまで働きかけてくれた。のちのち彼に理由を聞いたが、「いや実は俺も丁度めんどくさいと思っていたところだった」と言ったときには笑ってしまったが。それ何年も続けてたくせにな!
ちなみにそのアプリケーションは、そりゃもちろんいま思うと酷い出来だったが、当時においては周囲になんとなく評価されたこともあって、一定の達成感をもたらしてくれた。それがきっかけでコードを書くっつうのが意外に楽しいことで、もしかしたらこれで飯を食うべきなのかな、なんて勘違いをしたり。
暫くして俺は退職することになる。まあその後のことは想像にお任せする。
で、ここから元増田に対しての話だけど、そういう尖った新人は変に縛らずに、もちろんやることはやった上での話なんだが、時間見つけて自由にさせてやりゃいいんじゃないかなと思う。組織的には難しいのは想像に易いので、いきなりじゃなくていいと思うんだ。例えば新人の考えるルーチンワーク改善案と、それを実現する成果物はどういうものかを論じるだけでも大きな前進だと思う。そうすりゃもしかしたら奴は、その成果物を勝手に作り出すかもしれないんだぜ。実現させるためにプライベートを割いて色々勉強しだすかもしれないんだぜ。そうして得た知識は、彼が増田に感じた恩義の分だけ戻ってくる。困ったときに助けてくれる存在になる可能性があるんだぜ。
個としての人格を殺してルーチンワークをさせることは組織としては簡単だが、死にたくないと主張している人格を殺す必要も無いだろうと思う。殺したが最後、血飛沫に塗れて掃除するのが大変なことになる。殺すぐらいなら活かしたほうが、お互いにとって良いことである可能性のほうが高いのは自明だろう。
最後に、自分の人生において、周囲が意図したかどうかは定かではないが、個を活かすことができる環境に偶然でも潜り込めたことを感謝したい。コードを書く機会と出会わなければ死は必定だった。それにしても、今もあのサーバは動いているのかな。
初めての増田にして、いきなり愚痴混じりの長文になるであろうことを、まずはお詫びしておきたい。 「お前、増田は初めてか?力抜けよ」と流し見ていただけるなら幸いである。 新...
http://anond.hatelabo.jp/20081116133036 の新人君が、昔の自分にほんのちょっとだけかぶるところがあるなあと思ったので、空気を読まずにつらつらと自分語りをしてみる。 数年前、勤めていた...
>当時は今にも勝る不景気、いわゆる就職氷河期の真っ只中 2000年くらいの話?
サーバーは止まってるかもしれないが、監視スクリプトはまだ走ってると思う。 hobbitとかhinemosとかnagiosとか高性能なものはいっぱいあるが、0から書いたスクリプトってのは自社の需要と...
そんな開発大好きな新人にルーチンワークをやらせる意味がわからない。 ルーチンが得意な奴はそれはそれでいるし、開発がめちゃめちゃ好きな奴もいる。 無理にジェネラリストを作る...
なあ、そういう愚痴はこういうところに書き込まないで、飲み込むか同僚か奥さんか彼女にでも言えば?
あー。 いくつか気になった。 処理がどういう風に回っているか、どういうシステムなのかという掘り下げたレベルの理解は、今の時点では求めていない。 求めなくてもいいから、聞...
ブラックな会社って、相変わらず人を腐らせぶっ壊すのが得意だなー。
「手順a、手順bと進めて…次にcが走るのを適当に見ればいいんですよね?」と、彼は口走った。 どんな処理が走ってるかもわからずに、順番に処理が走るのを見てればいいってことを...
分かりやすく、仕事に熱意もってなさそうなアンチ意見多いけど。 ます増田自分に酔いすぎ。読んでてキモイ。 業務的には、現場のマニュアルはあった方がいいのが確かだし、問題意...
http://anond.hatelabo.jp/20081116133036 ブラックじゃなくてもIT業界こんなのがデフォだから困る。 仕事始めたからには自分の扱ってるシステムなり業務の概要を つかみたいと思うのが普通だろう...
http://anond.hatelabo.jp/20081116133036 正直ブラックかどうかは定義にもよるし関係なく 仕事の向き不向きで言えば後輩は別の会社を早々に探す算段がついたと思うわww
全部は読んでないけど、俺が辞めた某大手企業に似てた。ITじゃないけど。 歯車が欲しいなら最初から歯車採用ですって言って募集しろよ。それでも人は集まるよ。 調子のいいことばっ...
まさにこういう会社→http://anond.hatelabo.jp/20081116160433とかに引っかかったタイプなんじゃないの。応募する奴も悪いとは思うけどね。たいしたことできねぇくせに最初からこれは俺がやりた...
たいしたことできねぇくせに最初からこれは俺がやりたい仕事ではないと泣き言言う奴とか。 『こういう仕事がやりたい』と言うと、問答無用でそのタイプだと解釈する奴が多すぎて...
読んでみたら、単なる新人にありがちな甘えじゃん。 はっきり言ってやれば?インフラの事も分からん奴に設計なんてやらせるわけがない、って。 そいつは自分の能力に過剰な自信を持...
新人の態度が良くないのは確かにあると思うが、 ・とにかく今は何も考えず、マニュアル通りやれ。 ・ちなみにマニュアルはないから、自作してねw こんなんじゃ適当だって言われて...
おおかた、設計が偉くてサーバー管理とかネットワーク管理はたいした事無い仕事、とでも思ってるんだろ。 そう考えてるベテランも多いよ。ユーザ側ではね。
http://anond.hatelabo.jp/20081116133036の記事なんだけれど。 うーん。単に増田が我慢し過ぎなきがする。 感情的になってあげつらっている部分も否定できないし、 冷静に状況を判断してみては?...
まあ増田に苛められて辞めていくだろう。 ルーチン業務とか言われてカチンと来てるんだろ?増田に書くくらいなんだから。 そもそも、新人にマニュアル作らせるとかどんだけいい加...
社会人なのにいつもうとうとしてるその新人もだめだが、つまらなそうな仕事&職場だな。 ルーチンワークだから、その仕組みなんかは考えなくていい。 ルーチンワークなのに、マニュ...
なんか元増田に反論的なコメントが多くてびっくりだ。 最初から開発業務に突っ込めるほど使える新人ならともかくとして、 雑用から入るのもありだと思うけど。 まあ、マニュアルな...
面白い
「エンジニアのための時間管理術」って本の文書化って項目を参考にしてはどうだろう。 いっぺんに文書化しようとするのではなくて、 Wikiを使って全員でちょっとずつ書いていくという...
なんだか私の上司みたいな増田だなぁ。 というか、新人君ってもしかして私のことですか?>増田 http://anond.hatelabo.jp/20081116 > いっぺんに文書化しようとするのではなくて、 Wikiを使っ...
増田は この仕事が つまらないと 感じている。
ある程度ちゃんとしたマニュアルあるなら、 マニュアルの各章の先頭に□(チェックボックス)を記載してみるというのはどうですか? その新人が実際に作業するとき その章の手順完了す...
今年新入社員で入った者だが、 どう見ても“先輩社員に腫れ物扱いされるだろうなー”って同期がいるよ。 特徴として (1)話していても感情がまるで伝わってこない 先輩に教えら...
こういう人は、なぜにこう自分が「一緒にいたいな」と思える人格になれないんだろう…… おそらく似た人といたら罵り合いになるように思うのだが。
私は開発の人間、ブコメ見ると開発の人間は運用がわかっていないってのがある。 運用の人間はルーチンワークを自動化しないのは理由があるみたいな書き方だけど、 何か理由あるの?...
お客さんからその分のお金をいただいている、とか、まあ歴史的事情が大きいのじゃない? あとまあ不定形の障害が不定期に発生するとかさ。
あとまあ不定形の障害が不定期に発生するとかさ。 これが理由なら 障害系は後回しにして、正常処理を先に自動化してみたら? コマンド実行したら、リターン値表示して ”処理続行...
あとまあ不定形の障害が不定期に発生するとかさ。 これはルーチンワークではないので、あまり自動化するメリットないですね。 ある程度安定したシステムなら障害はたまにしか発生...
かつて、同じように人手不足の中で運用を手伝っていたんだが、増田はまあよく頑張っているんじゃないかと思う。 運用の自動化なんて言っても、それなりにパワーがないと夢のまた...
●ルーチンワークを自動化できない理由 私は運用の人間。 今でこそITILなんてあって、周知されつつあるけれど、いまだ運用の仕方なんて各所バラバラだと思う。 で、全般的に言えるだ...
その新入りさんとしては面接の折に、 「前までの経験を活かして、サービス・システム開発の部署に就きたい」 という意思を示していたようだ。 ただ、いきなり開発部署に放り込ん...