2023-01-24

あの酢豚をもう一度食べたい

実家のある田舎には中華料理が出てくる店はひとつしかなかった。夜はスナックになるような店。そこの店に土鍋大皿を持っておつかいに行くのが子ども仕事だった。持参した器に酢豚餃子をそれぞれ5人前入れてもらう。料理が出てくるまでの間、きれいなお姉さんがポッキースルメを食べさせてくれるのが嬉しかった。

ここの酢豚は、とにかく衣が厚い。ぶよぶよの塊が肉の倍以上ひっついている。弾力と粘りがあって口を閉じて噛んでもクチャクチャ音がするほどだ。

この衣が酢豚あんをこれでもかと吸っている。目に染みるほど酢の匂いがするのに、口に入れると意外とマイルドあんの甘酸っぱさでご飯がすすむ。

この酢豚我が家のごちそうだった。

先日、「あの店なくなっちゃった!」と実家の母から連絡がきた。母曰く突然重機が店を壊し出したそうな。まさか物理的になくなったとは思わずびっくりした。

もう食べられないと聞くと余計に食べたくなる。こんなことならもう少し実家に帰る頻度を増やして酢豚を食べておくべきだった。

再現しようと試みたけれどうまくいかない。とくにあの衣は何度やっても再現できない。

どうにかもう一度あの酢豚が食べたい。どうにかして再現できないだろうか。

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