2008-03-01

死んだAさんと生きるBさんとお墓の前でした話

http://anond.hatelabo.jp/20080226210253

Bさんと久しぶりに2人で出かけることにした。

1度目は学生時代、2度目はお葬式、3度目はある町の寺社仏閣めぐり、

今回はお墓参りである。

集合場所である駅から電車に乗った。

各停しか停まらない小さな駅から歩いて15分ほどの所にお寺がある。

いつも饒舌に喋っている僕はほとんど喋れない。

ときどきBさんが話を振ってくれるのだが、まともな会話が続かない。

自分でも緊張しているのが分かる。

入って左手に20基ほどの墓標が並ぶところにAさんのお墓がある。

彼女が死ぬまで嫌っていた父親の家の墓だ。

春になるとここは桜で埋め尽くされる。

ただ、お彼岸から2週間ほど。

周りの墓には陽気でやや疲れ気味のお花が飾られていたが、

彼女の眠る場所には何もなかった。あの家族。ここに来ていないのか。

バケツをとってくる」とBさんが離れた。

僕はAさんと1人で対面した。一年半ぶりのことだ。

目を閉じて無心で彼女の顔を思い出した。

そしてようやく言えた。「ゴメンね。一緒にいられなくて」

あの子は、いつも自分が他者にどう見られるのか。そればかり悩んでいた。

なぜ受け入れられないのか。なぜ他者とあわせられないのか。そのことに苦しんでいた。

僕は「他の人の気持ちも考えなくちゃ」を様々な表現で何度も説明した。

そこで彼女が最後に切り札として出したのが僕との結婚

ロリオタである僕に小学生並みの体を提供すること。それが交換条件だった。

もう他者との関係を"モノ"で釣るしかできななくなっていた。

ずーっと彼女を助けられなかった自分を責め、後悔し続けた。

でも、彼女を想っての悩みだったはずが、途中で変わってしまった。

この子と2人でいることを想像するのが怖かった。

他者への尊敬も思いもなく、ただ自分のことしか考えられなくなった。

誰かに依存しようとした。誰かに自分を救って欲しかった。

死を選択せねばならなかった彼女と全く同じことをしていた。

Bさんがバケツに水を入れて帰ってきた。

簡単にお墓を掃除をして、僕が線香を付けた。

そしてひたすら手を合わせ続けた。

いつか彼女と会話ができることを祈り続けた。

終わって立ち上がると、そこにはBさんがいた。

「どうです?」

「うん、なんとか」

「もう一年半も経つんですね」

今日は付き合ってくれてありがとう

「いえいえ、自分も来たいなあと思ってたんです」

「ずーっと、ここに来るのが怖かったんだ。

今日、そしてあのとき、Bさんがいなければ

僕はどうかなっていたかもしれない。本当にありがとう

初めて僕は他者に打ち明けることができた。

この間の心の変動を正直に告白した。

「私もそうですよ」とBさんも続けた。

彼女が抱える闇の一部分を僕に教えてくれた。

それから僕とBさんは、お墓の前で、電車の中で、

そして昼食に入った店で、とりとめもなく喋り続けた。

やっぱ、Bさん。いい子だ。

非モテ百合系オタで文学少女である自分への戸惑いはある。

でも、躊躇いを振り切って、なんとか前へ歩こうとしている。

傍目から見たらヨタヨタはしているけど、でもやりたいことを持ち続けている

とにかく彼女幸せになってくれたらいいな。

僕はそう願い続け、心の中で彼女を抱きしめた

2人の奇妙デートの最後は駅のホームだった。

「じゃあ」

「また」

僕らはあっさり別れた。

やがて電車の扉が閉まる。

僕が手を挙げると、彼女は微笑んだ。

僕は肝心のことを忘れている。

Bさんが好きなことを伝えていないのだ。

でも、もう少し経って、

彼女依存しなくても大丈夫になったと

自分で確認できたとき、電話をしてみよう。

それから半年経った。

さて、このような私的なポエムを書き連ねてきた、

その理由についても説明せねばならない。

僕の後輩で、Aさん・Bさんの先輩であるCという男の存在だ。

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