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2010-09-08

大人向けアメコミとKIM625ら表現規制反対派の欺瞞的問いについて 

KIM625 マンガ, アニメ, 文化 アメリカにはなぜ大人向けコミックが無いのか、なぜ日本にはあるのか。 2010/09/08

http://b.hatena.ne.jp/KIM625/20100908#bookmark-24688694

はてな表現規制反対派の重鎮KIM625のこの問い、一見素朴なギモンに思えるが違うんだよね。

表現規制反対派の間では、出来合いの答えがある。

コミックスコードによる規制のため子供向けのものしか許されなかった」という答えがそれだ。

そして日本もそうならないように規制をしてはならないと続く。

KIM625の問いはこの答えを念頭においたものだろう。だが、この表現規制批判派史観はどこまで正しいのか?


田中秀臣氏がブログで調べ続けているようにアメリカン・コミックスの不人気の主犯がコミックスコードだという説は実証的に否定されつつあるという。

コミックスコード主犯説はもはや定説ではない。


それ以前の問題がある。大人向けコミックがないというのは果たして事実なのか?

実際には、MADアート・スピーゲルマン映画にもなったロバート・クラム作品やアメリカン・スプレンダーのような先鋭的な大人向け作品の流れが、ほそぼそとながら、六十年代から続いていた。

アンダーグラウンドコミックスと呼ばれるこれらの流れは、80年代頃からスピーゲルマンが自らの父の体験と緻密な調査を元にアウシュビッツの悲劇を描いた「マウス」などのヒットにより日のあたるところに現れ、スーパーヒーローなどの商業コミックスに対向するものとして「オルタナティヴコミックス」と呼ばれるジャンルが成立する。


一方の商業コミックスだんだんと大人向け路線になり八十年代には映画化したウォッチメンなどの大人向け作品がヒット、90年代には大手コミックス社からスーパーヒーローにとらわれないやや文芸路線のmature reader向作品レーベルVertigoが現れるなどの流れが起きる。

この流れとオルタナティヴコミックスの二つの流れ、そしてスーパーヒーローなどの旧来型の流れは、未だ別々に流れているが、だんだんと中間的作品も現れ、現在ではかなり曖昧な区別しかなくなっている。


では、"旧来型"のアメコミ子供向けというのは事実なのだろうか?成熟した真っ当な大人向けと見なされていないのはたしかに事実だろう。

だが、それと実際の年齢層は別の問題だ。

なんと”アメコミ”の主要な読者はずっと昔から「男の子」ではなく「キモオタ」なのだ。

むしろコミックス業界は将来の投資のため子供コミックスを手に取らせる方策を考えているくらいだ。

田中秀臣氏推薦の『戦争はいかにマンガを変えるか』から引用しよう。

この極度にマニア層に依存した構造市場から、書店での一般読者の獲得から、書店での一般読者の獲得と映画展開などによるライセンスビジネスによって突破口を開いたのが現在グラフィックノベルブームに沸くアメリカコミックス界であるわけだが、以上からわかるようにそれ以前からすでにコミックブックは子供向けのものなどではなくなっていた。

(ながいので中略)

つまり当のアメリカ人にとってすら「コミックブック=子供向け」という神話の影響が強すぎるために、実際に子供に読まれているマンガが「マンガ」としては見えなくなってしまっているのである。(p38-39)

なお、此処でいうマンガと見なされていないが「実際に子供に読まれているマンガ」は日本マンガをさしているのではなく、ディズニーニコロデオンなどのアニメや名作文学コミカライズなどを指している。小田切氏の意見によると、ジャンプなどのマンガアメリカ市場で競合しているのはスーパーヒーローなどではなくこちらだろうと述べている。

小田切氏に従うなら、「アメリカにはなぜ大人向けコミックが無いのか、なぜ日本にはあるのか。」ではなく「アメリカにはなぜ子供向けコミックが衰退したのか、なぜ日本にでは盛況なのか。」と問うべきだ。

なぜこうも転倒した問いになるか。

それは何でも規制反対に結び付けたいという心性があるんではあにか?

こう思うのは邪推だろうか?

lisagasu 日本の名作少女漫画は繊細すぎてウケない予感…トワイライトが売れてるなら、乙女ゲームコミカライズとかのがいいんじゃ?なんにしても少年漫画以上の市場になるイメージがないんだけど 2010/09/08

24年組が受けてないというかそもそも今まで翻訳が出てなかった(出版予定)のは事実だが、従来のオルタナティヴコミックスのファン層には注目されてるようだ。

http://oharakay.com/archives/2189

 
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