<お題>
ある日曜の朝早くにスタントン通りを歩いていると、何メートルか先に一羽の鶏が見えた。私の方が歩みが速かったので、じきに追いついていった。十八番街も近くなってきたころには、鶏のすぐうしろまで来ていた。十八番街で、鶏は南に曲がった。角から四軒目の家まで来ると、私道に入っていき、玄関前の階段をぴょんぴょん上がって、金属の防風ドアをくちばしで鋭く叩いた。やや間があって、ドアが開き、鶏は中に入っていった。
鶏が入ったあとも、防風ドアは鶏が通っていったまま開いていた。隙間から中を覗くと家が見える。歴史のあるたたずまいの屋根がとんがった家があり、その玄関に向かって鶏は歩いていった。防風ドアと同じように玄関の古びた木の扉を4回くちばしで鋭く叩くと、木の扉は重苦しいきしみを響かせながらゆっくりと開き、鶏は家の中へ入っていった。
鶏がとる行動に奇妙な不思議さを感じ、好奇心が背中を押す。わずかに開いた防風ドアを抜け、少しだけためらったあと、鶏について木の扉から家の中に入った。
大きな家だった。外観からすると内部は広く、玄関にある調度品がすべて特注品のように大きい。暗い廊下が続いていて、肌寒く感じる。カビの匂いと熟した果実のような甘いにおいが漂い、香を焚いたように煙っている。物音は何も聞こえない。廊下を抜け、リビングに入ると、大きな窓のカーテンが締めきられ、ソファが並んでいた。わずかにカーテンの隙間から光が差し込んでいる。リビングの壁には大きな鏡らしきものが掛けてあった。
「御到着かな・・・・・・」
突然リビングに低く静かな声が響き、奥のソファに一人の男が深々と腰をおろしていた。大きな体と無造作に肩まで伸びた髪、表情は暗い影になって読み取れない。
「対称なる時、対称なる街、対称なる道順」
「あと必要なのは、対称なるいけにえ・・・・・・」
暗い部屋に響く男の言葉に、冷たく刺すようなくぐもった笑いが混じる。原始的な危機の感覚が呼び覚まされ、リビングを去ろうとするが、体が動かない。
足元を見ると、足元の黒い床に丸い円と不可思議な見慣れない文字、そして数々の文様が白いラインで描かれている。
「すでにもう始まっているんだよ」
こみあげてくる恐怖に声をあげると、鶏の鳴き声が室内に響いた。
リビングの鏡が見える。
鏡の中には見慣れた自分の姿は無かった。そこに映っていたのは、白いラインの円の上でもがく一匹の鶏の姿だった。
いつの間にか男は左手に鶏を持っていた。
ソファからゆっくりと立ち上がり、円の上でもがく鶏に、男は右手を伸ばした。
断片から書くという課題。
文章の断片から文章を含めるか、そこから発想を拡げて別の文章にする。
ある日曜の朝早くにスタントン通りを歩いていると、何メートルか先に一羽の鶏が見えた。私の方が歩みが速かったので、じきに追いついていった。十八番街も近くなってきたころには、鶏のすぐうしろまで来ていた。十八番街で、鶏は南に曲がった。角から四軒目の家まで来ると、私道に入っていき、玄関前の階段をぴょんぴょん上がって、金属の防風ドアをくちばしで鋭く叩いた。やや間があって、ドアが開き、鶏は中に入っていった。
通りの名称などは好きな地名に変えてよい。
http://anond.hatelabo.jp/20090127110653
<お題>
それは「男に対して」の話だろ?
女に対しては無視しないよ。
「それは『男に対して』の話だろ? 女に対しては無視しないよ」
エリコの問いに男が答えた言葉はそれだった。
エリコは、度々参加しているサークルのオフ会で、はじめて来ていた男と話をしていた。カジュアルなシャツとジーパンで割と小奇麗な格好をしているその男は、ちょっとイッちゃってる人が集うサークル内で、真面目そうな印象でちょっと浮いていた。オフ会の雰囲気に馴染めないのか、全く誰とも話をしていなかった。
いや、話をしていないというよりも、そこにいる人を全て無視しているような不思議な雰囲気だ。
エリコはどちらかというと仲間はずれになったりする人がいるのは嫌なので、酒が回ってきたことも手伝ってその男の隣に座って、話しかけてみた。
話をしてみると、男は意外と話しやすく、ざっくばらんなしゃべり方をする。
エリコは次第に男との会話に打ち解け、さっき自分が感じていた印象を男に聞いてみた。せっかく来てるのに、あなたってまるでみんなを無視しているように見えるわ、と。
すると男は、エリコに先ほどのような言葉を返したのだった。「男だけを無視している」という違和感を感じる答えだった。
「何で『男に対して』って限定で、しかも『無視』するの? 変なの」
「だって、男にはチンコがあるだろ」
「チンコがあったら何で無視するの?」
彼はやれやれと声には出さなかったが唇の形を確かにそう動かして、神経質にちょうど真ん中で分けられた髪を何度か弄びながら、ため息をついて話を続けた。
「チンコは外に突起して出ているだろ。大きい小さいに関わらず、外界に突起している、これは外界に向けて常に『干渉している』ということなんだよ。僕は空間の干渉によって生じる波、『ウェイブ』を感じることが出来る超能力者なんだ。男からは常にそのウェイブを感じ取ってしまう。うは、でっかいチンコが来たとか、コイツ威勢のいいこと言うわりにチンコは縮みあがっているとか、その他もう、チンコチンコチンコ! 気を抜いていると一日中チンコからのウェイブだけを感じて終わってしまうんだ。日常生活でこれを常に感じ取っていたら僕はきっと気が狂ってしまうだろう。僕はこの能力に目覚めてから、努力を重ね、意識的に男の存在自体を無視するようになったんだ。男という存在を完全に無視することが出来るようになって、ようやく男から発せられるウェイブを感じないように自分の能力を抑えることができるようになったんだ」
うわ、なんていうつまんない超能力、という言葉を何とかグッと飲み込んで、彼女はある一つの疑問を彼に投げかけた。
「おっぱいも外に向かって突起してるじゃない。それは・・・・・・どうなるの?」
「チンコの禍々しいウェイブと違って、おっぱいのウェイブは芸術なんだよ。おっぱいは正義であり、神だと僕は思っている。僕にとっておっぱいからのウェイブは神の言葉と同じなんだ。大きい、小さい、爆裂、平原、さまざまなおっぱいからのウェイブが僕の生きる糧であり、人生の道しるべなんだよ。今こうしている瞬間にも、神の声が聞こえる。うん、このウェイブは確実にAカップだ、うん、間違いない! だが、小さいながらも美しいプロポーションで、春風のように暖かくて爽やかなウェイブを発している。素晴らしいウェイブだよ! うん、自信を持っていい! 君のウェイブは素晴らしい!!」
「え、Aカップで悪かったわね、このど変態!」
彼女の右拳はえぐりこむように的確に彼の顔面をヒットした。彼はエロ分けのストレートヘアを振り乱し、床にひれ伏した。しばらくして顔を上げ、そして、にっこりと笑う。
「うん、来てる! いい感じにプルプル揺れてるAカップのウェイブがビンビンに来てるよ!」
Aカップ連呼すんな。